2008年度第2回学融合セミナー
- 講義:
- 2008年5月28日 17:30~19:00
- 場所:
- 新領域基盤棟大講義室(2C0)
学融合のイメージ -剣、準結晶、結合転換-
木村 薫 教授
私が持っている学融合のイメージを、分かり易いように趣味の話から始め、 これまでの研究経験から、最近の妄想までをお話しする。2つの分野の比較と、 別の分野の言葉で語ることが、新しい認識(学融合)を生み出す。剣道とフェン シングの比較と人類生物学による記述が、剣を使う技術の東西の違いを浮き 彫りにする。結晶とアモルファス固体の比較と、冶金学で作られた新物質の 構造が数学パズルの解で説明されたことから、準結晶という新しい概念が 誕生した。金属分野と半導体分野でそれぞれ研究されてきた物質群に、 正20面体クラスター固体として統一的描像を構築し、金属結合-共有結合転換 を提案している。この証拠となる、実空間における実験結果が、k空間やエネルギー 空間のそれと異なる認識を生むことを示す。前者が右脳による直観的認識で、 後者が左脳による論理的認識ではないか。この2つの認識を協調して物理学が 作られていることを知ることにより生まれる、新たな学融合を期待する。
昆虫の皮膚から探る新たなタンパク質架橋技術
藤原 晴彦 教授
昆虫の皮膚は脱皮のたびに、体外に分泌した数十種類以上のタンパク質が架橋 されて生じる。乾燥や感染から身を守り、昆虫種や適応環境によってその組成は異 なり、時にはしなやかで時には硬い「究極のバイオマテリアル」、それが昆虫の皮膚 である。我々は、昆虫の皮膚タンパク質中にGGYGGという反復したアミノ酸配列が 含まれることを発見した。この反復配列は、昆虫の卵や絹糸、哺乳類のケラチン、 植物の細胞壁など、様々な硬いタンパク質にも含まれることから、架橋に関係した 構造ではないかと推測した。GGYGGを含むペプチドやタンパク質を合成し、チロシ ナーゼなどの酸化酵素を反応させると、Y-Y間で特異的な架橋を生じさせることに 成功した。この技術は、プロテインチップ、バイオリアクター、新規タンパク質 素材の 開発などに応用できるかもしれない。
オンデマンド総合交通システム
大和 裕幸 教授
公共交通は定時刻定路線を前提としてきた。しかし、最近の携帯電話等の普及で 交通システムと個人が直接コミュニケーションすることでダイナミックな交通需要を 把握し、バス、自転車、タクシーなどの交通システムを個人のライフスタイルに 応じて 提供できる。快適で環境負荷も少ないモビリティ社会の実現の技術的手段の一つと 考えられる。研究室で行った柏の葉での社会実験結果なども紹介する。