2008年度第5回学融合セミナー
- 講義:
- 2008年10月22日 17:30~19:00
- 場所:
- 新領域基盤棟大講義室(2C0)
プレート境界の観測科学と物質科学
鳥海 光弘 教授
固体地球のほとんどの現象はプレート境界で発生している。それはプレート境 界で固体地球物質の歪と熱放出が集中しているからである。特に日本列島周辺の プレート境界の実像は最近大規模な観測が行われ、多くの事実が分かってきた。 そのうち、プレート境界部における地震波速度の減少率やその比が空間的に不均 質となっていることが発見され、かつ巨大地震の頻発するアスペリティと呼ばれ る力学結合の強い部分とが重なる領域を示したことは大いに驚かせることであっ た。また、プレート境界における不安定すべり現象が相次いで発見され、ゆっく り地震または静かな地震ともよばれ、大変長周期の不安定すべりであることが確 定し、地震性すべりとあいまって、広帯域の不安定すべりがいろいろな境界で発 生していることが明らかになってきた。 こうした境界域の力学的挙動は不安定すべりであり、非線形挙動をおこす典型 的な固体地球現象である。そのような現象がどのような物質とその状態で発生し ているかについて、過去のプレート境界物質であった岩石の温度圧力履歴と脱水 量履歴および力学結合の履歴から解読することが可能である。実際には時間的に 不均質な脱水反応が力学的な変形やすべり挙動、クラック形成、流体移動などと カップリングして、不安定すべりを引き起こしていることが明らかにされた。そ のような多くの物理量の時間と空間変動からみると、プレート境界における微小 破壊現象と巨大破壊との関係についての新しい研究方向が見えるだろう。
音声認識からRNA構造予測へ
浅井 潔 教授
音声認識とゲノム情報の解読には、階層的な構造を持つ対象のパターン認識と いう、共通の工学的特徴がある。音声信号、DNA配列などの観測できる信号の 裏側に、単語、遺伝子などの「隠れ状態=知りたい本質」が隠されていて、その 隠れた本質が文法、力学などのルールに支配されているのである。音声認識で大 成功した確率モデルによる情報解析が、どのように遺伝子発見、さらにはRNA 構造予測でも威力を発揮しているかを紹介したい。
浮体式風車による洋上風力エネルギーの利用の可能性について
鈴木 英之 教授
持続可能な社会を構築する上で、再生可能エネルギーをどのように位置づける かは、わが国とって重要な検討項目である。わが国の管轄する海域に賦存する膨 大な風力エネルギーの利用について技術、経済性、環境負荷の観点から展望する。