2018年度第4回学融合セミナー
- 講義:
- 2018年7月18日 16:50~18:35
- 場所:
- 新領域基盤棟大講義室(2C0)
持続可能社会のための触媒研究
佐々木 岳彦 准教授持続可能社会を実現するために、触媒は重要な役割を果たしている。現在の研究状況に関して紹介した後、当研究室で取り組んでいる固定化イオン液体触媒や計算化学についての内容を紹介する。
ウイルスの巧妙な生き残り戦略
中野 和民 准教授DNAウイルスもRNAウイルスも、ウイルスは自分の設計図(ゲノム)だけを宿主細胞(工場)に紛れ込ませ、宿主細胞の機械や道具を使って自分自身を複製する。ウイルス・ゲノムが宿主細胞に留まる時間はウイルスによって異なるが、その最たるものはヒト白血病ウイルス(HTLV-1)であろう。レトロウイルスの一種であるHTLV-1は1本鎖RNAゲノムを持ち、ゲノムRNAを逆転写して2本鎖DNAに変換した後、宿主ヒトゲノムに永続的に組み込まれる。感染T細胞は初期のウイルス活動によって不死化し、数十年間生き続けると考えられている。不死化感染T細胞はやがて母乳を介して子供の体内に移り、次世代に伝播していく。何十年も生き続けた感染T細胞は、時にさまざまな分子異常を蓄積し、やがて成人T細胞白血病(ATL)や、HTLV-1関連脊髄症(HAM)などの重篤な疾患を引き起こす。ATLやHAMには未だ決定的な治療法が無く、その主な原因は、HTLV-1がどのように宿主T細胞の細胞内環境や機能をハイジャックし、生体内の免疫応答を避けて感染T細胞を生き延びさせているのか、その生き残り戦略が完全に分かっていないためである。本講演ではHTLV-1を中心に、ウイルスが自分の設計図どおりに宿主細胞を操る巧妙な戦略について紹介するとともに、それに対抗した抗ウイルス薬開発戦略の最前線についてお話しする。
固体中のイオン拡散とエネルギー変換システムの設計
大友 順一郎 准教授イオン伝導体は、発電や蓄エネルギー技術を支える重要な材料である。本講義では、酸化物イオン、プロトン、リチウムなどの固体中のイオン拡散について解説し、現在注目を浴びている材料群について紹介する。また、固体中のイオン、電子、ホールの伝導特性を、化学反応と結びつけることで、様々なエネルギー変換技術への応用が可能になる。これらイオン伝導体の輸送物性を利用して、どのようにすれば高性能なデバイスやシステムの実現に結びつけられるのか、燃料電池、電解合成、水素製造などの最新のトピックスを交えながら、それらデバイスやシステムの設計論について解説する。。