ONO Yasushi
(Professor/Division of Transdisciplinary Sciences)
Department of Advanced Energy/プラズマ核融合工学
Career Summary
1983年3月東京大学工学部電気工学科卒業
1986年5月?1988年5月米国プリンストン大学プラズマ物理研究所客員研究員
1988年3月東京大学大学院工学系研究科電気工学博士課程修了(工学博士)
1988年4月東京大学工学部助手
1989年4月東京大学工学部専任Lecturer
1993年4月東京大学工学部助教授
2004年9月東京大学大学院工学系研究科教授を経て2005年4月より現職
Educational Activities
大学院:プラズマ核融合工学、先進核融合理工学、プラズマ計測法、プラズマ応用工学
工学部電気工学科:プラズマ理工学、エネルギー変換工学
Research Activities
小野研究室の研究対象は"プラズマ" です。研究分野は、核融合発電の実現を夢見て、核融合エネルギー開発から太陽、宇宙、さらにはプラズマ応用までをカバーします。
人口爆発、環境破壊、資源枯渇のため現代文明は危機に直面するといわれ、CO2を大量放出する化石燃料から、環境保全性が高く、無尽蔵の資源量が見込める核融合エネルギーへの大転換が待たれています。臨界プラズマ条件までに進歩した核融合の課題は、如何にその経済性を高め、コンパクト化や経済性向上をはかるか、そして実用発電をいかに早めるかです。
当研究室は過去20年間、この核融合の経済性を飛躍的に高める「球状トーラス」等、新アイデアの実証をTS-3球状トーラス実験装置を用いて行ってきました。米国でも昨年、大型実験装置NSTX(プリンストン大学)が運転を開始し、核融合研究は従来路線から簡素さ、経済性を重視する球状トーラスへと大きな流れを形成しつつあります。
球状トカマクの超高ベータ化・コンパクト化
トカマクの経済性(単位磁界あたり閉じ込められるプラズマ量)、即ちベータ値を飛躍的に高めるため、ドーナツ型のプラズマ形状をギュッと極限までコンパクトなものにしています。我々が研究してきたこの球状トカマクSTは安価な核融合炉を実現する有力候補として、近年注目されています。我々は、さらにこれを磁力線再結合という独自手法によって急速加熱してベータ値(プラズマ熱圧力/磁気圧)を急上昇させ、従来の常識を大幅に越える60%のベータ値を有するSTを最初に生成することに成功しました。これにより少ないコイル電流でより多くのプラズマ閉じ込めが可能になります。こうした球状トカマクが安定に生成できたのは、ベータ値の上限を決定するバルーニング不安定が安定化される新領域、第2安定領域が実現されたためと考えられ、今後の発展が期待されています。以上の成果により我々の実験装置も大型化が認められ、主装置TS-4球状トーラス装置が2000年11月より稼働し、球状トカマク実験に特化したUTST装置が建設中です。
磁力線・プラズマ運動を解明するモデル実験・計算機解析
核融合プラズマの挙動を解明するため、そのキーとなる部分を抽出したモデル実験を組み、大きな成果をあげています。プラズマ中の磁力線がつなぎ変わる「磁力線再結合現象」の実験解析は典型例です。同現象は、核融合プラズマの閉じ込め悪化を招いたり、大きな加熱効果が得られたり、悪玉にも善玉にもなるため、その制御は重要です。プラズマ合体を用いた我々の実験解析手法は米国Princeton大学、MITをはじめ、多くの新装置建設に結びつき、世界的に波及しています。現在、教官・学生の相互訪問を通じて共同研究を進めています。また、電磁流体力学方程式を数値的に解いてその時間発展をみる、いわば"計算機実験"を行って将来予測に役立てています。
プラズマの先端産業応用・プラズマ計測法の開発
プラズマは核融合分野以外にも、半導体材料処理、公害物質 分解など社会に広く活用されています。企業が開発にしのぎを削る半導体プロセスプラズマをはじめ、幅広い応用を開拓しつつ、全てのプラズマに必要な先端プラズマ計測法、例えばトモグラフィーやレーザ散乱、干渉やレーザ蛍光誘起を用いた2次元計測法の開発を行っています。
Literature
1) Y. Ono, M. Inomoto, T. Okazaki and Y. Ueda: "Experimental Investigation of Three-Component Magnetic Reconnection by Use of Merging Spheromaks and Tokamaks", Physics of Plasmas, Vol. 4, No. 5, Pt. 2, (1997), 1953.
2) Y. Ono and M. Inomoto: "Ultra-High Beta Spherical Tokamak Formation by Use of Oblate Field-Reversed Configuration", Physics of Plasmas, Vol. 7, No. 5, (2000), 1863.
3) Y. Ono, T. Kimura, E. Kawamori, Y. Murata, S. Miyazaki, Y. Ueda, M. Inomoto, A. L. Balandin and M. Katsurai "First and Second-Stable Spherical Tokamaks in Reconnection Heating Experiments", Nuclear Fusion, Vol. 43, No. 8, (2003), 789.
4) E. Kawamori and Y. Ono, ""Effect of Ion Skin Depth on Relaxation of Merging Spheromaks to a Field-Reversed Configuration "", Physical Review Letters, Vol. 95, No. 18, 085003, (2005).
5) 小野、柴田、星野、藤本:小特集「磁気リコネクション研究の到達点と課題」、プラズマ・核融合学会誌, 第77巻,第10号,2001年10月,948.
6) 小野、西尾,高瀬、長山、前川:小特集「球状トカマクの実用炉への展望」、プラズマ・核融合学会誌, 第80巻,第11号,2004年11月,919.
Other Activities
電気学会、日本物理学会、プラズマ・核融合学会、APS、IEEE、各会員。
プラズマ核融合学会「球状トーラス研究」研究調査委員会委員長(2001?2003)、電気学会論文委員主査 (2002?2003)、電気学会基礎・材料・共通部門編修担当役員(2004?2005)、日本物理学会領域2(プラズマ物理)代表(2006?2007)等。
Future Plan
我々のゴールは球状トーラス磁気閉じ込め容器の最適化です。中でも球状トカマク(ST)と逆転磁場配位(FRC)が有利な特長に注目します。どちらもコンパクトに圧縮されたドーナツ状の球状トーラス磁場で超高温プラズマ(炉段階では1億度、数秒以上)を閉じ込めます。右上図のようにSTはドーナツの大円周方向(トロイダル方向)および小円周方向(ポロイダル方向)の磁場を持つのに対し、FRCはさらに簡単に小円周方向の磁場のみを持つのが特徴です。
(1)STはトカマクの良好な閉じ込めを保ちつつ、磁場利用効率を改善し、(2)FRCは極限まで構造を簡単化して革新的な高ベータを狙うといえます。両者の利点を融合し、欠点を補う研究が重要と考え、安価で効率の良い磁場閉じ込め配位を創造しています。例えば、我々はベータ値の低いスフェロマックプラズマを2個、合体させると、ベータ値が100%のFRCが従来の数倍の高い電力効率で生成されることを見出しました。現在、これは経済性の高い大型FRC生成法として注目されています。100%のベータ値を持つFRCは核融合炉になれば極めて有利ですが、FRCを安定に長時間維持できるかどうか更なる検証が必要です。
Messages to Students
人に役立つプラズマ応用を目指して工学から理学までカバーします。研究で大切にしている点は、「オリジナルな研究」(オリジナリティー)を「他人に先駆けて」(一番最初であること)、「ものにすること」です。「学術性の高い」(学問の本質になるべく近い)ことも重要です。自ら調べ、自ら考えて行動できる人、プラズマの研究者を目指す人を特に歓迎します。意欲があれば修士課程からどんどん海外の学会に参加するなど、海外交流が特に盛んな分野ですので、世界の研究者と対等に渡り合う競争力ある人材に育つことを願っています。