教員紹介

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津田 敦

(つだ あつし/教授/生命科学研究系)

先端生命科学専攻/先端海洋生命科学分野/生物海洋学

略歴

1982年3月北海道大学水産学部卒業
1987年3月東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了(農学博士)
1988年11月東京大学海洋研究所助手
1996年4月北海道区水産研究所室長
2003年4月東京大学海洋研究所助教授
2011年4月東京大学大気海洋研究所教授

教育活動

生物海洋学総論、海洋生態研究法、海洋生態学

研究活動

1.動物プランクトンの多様性研究
甲殻類のカイアシ類は動物プランクトンの中では最も優占する生物であり、2500種以上と多様性も高く水柱にくまなく生息している。100年以上にわたり、カイアシ類の分類は形態に基づき行われておりカイアシ類自体はかなり分類体系の確立した生物である。しかし、形態による分類は専門的な知識と時間を要する作業であり、広範囲、広分類群をカバーする群集研究はほとんど行われていない。近年発達したパイロシークエンス技術は高速で大量の塩基配列データを取得する技術であり、この技術を用いることで網羅的な群集研究が可能になりつつある。我々の研究室では28SrRNS配列を用いた方法を開発し効率的な群集解析、胃内容物分析、被食捕食関係解析に応用することを考えている。また、これらの手法を、形態では分類できなかった卵や幼生期個体に応用することにより、海洋の群集構造や生活史研究に新たな光があてられると考えている。
2.海洋物質循環におけるプランクトンの役割
我々は10年以上にわたって海洋生物生産に及ぼす微量金属鉄の役割について研究を行ってきた。2011‐2004年にかけて北太平洋亜寒帯域において海洋鉄散布実験を行い、鉄が律速栄養素として植物プランクトン(特に珪藻)の増殖を制限していることを明らかにしてきた。近年では鉄に加え、台風通過、黄砂の沈着、海洋島の効果など生物にとって予想できない現象が、海の砂漠と呼ばれてきた亜熱帯海域の生物生産に及ぼす影響について研究を進めている。我々は台風や黄砂が地域的な生物生産を増加させ食物網構造を変えることを明らかにしている(文献1-4)。

文献

1) Tsuda, Takeda, Saito, Nishioka, Nojiri, Kudo, Kiyosawa, Shiomoto, Imai, Ono, Shimamoto, Tsumune, Yoshimura, Aono, Hinuma, Kinugasa, Suzuki, Sohrin, Noiri, Tani, Deguchi, Tsurushima, Ogawa, Fukami, Kuma and Saino. A mesoscale iron enrichment in the western subarctic Pacific induces large centric diatom bloom. Science, 300: 958-961, Tsuda, A., S. Takeda, H. Saito, J. Nishioka, Y. Nojiri, I. Kudo, H. Kiyosawa, A. Shiomoto, K. Imai, T. Ono, A. Shimamoto, D. Tsumune, T. Yoshimura, T. Aono, A. Hinuma, M. Kinugasa, K. Suzuki, Y. Sohrin, Y. Noiri, H. Tani, Y. Deguchi, N. Tsurushima, H. Ogawa, K. Fukami, K. Kuma and T. Saino: A mesoscale iron enrichment in the western subarctic Pacific induces large centric diatom bloom. Science, vol 300, pp. 958-961, 2003.
2) Boyd、Law, Wong, Nojiri, Tsuda, Levasseur, Takeda, Rivkin, Harrison, Strzepek, Gower, McKay, Abraham, Arychuk, Barwell-Clarke, Crawford, Crawford, Hale, Harada, Johnson, Kiyosawa, Kudo, Marchetti, Miller, Needoba, Nishioka, Ogawa, Page, Robert, Saito, Sastri, Sherry, Soutar, Sutherland, Taira, Whitney, Wong and Yoshimura: The decline and fate of an iron-induced subarctic phytoplankton bloom. Nature, vol 428, pp. 549?553, 2004. 3) Boyd, Jickells, Law, Blain, Boyle, Buesseler, Coale, Cullen, de Baar, Follows, Harvey, Lancelot, Levasseur, Owens, Pollard, Rivkin, Sarmiento, Schoemann, Smetacek, Takeda, Tsuda, Turner, Watson: Mesoscale iron enrichment experiments 1993-2005: Synthesis and future direction. Science, vol 315, pp.612-617, 2007.4) Tsuda, Takeda, Saito, Nishioka, Kudo, Nojiri, Suzuki, Uematsu, Wells, Tsumune, Yoshimura, Aono, Aramaki, Cochlan, Hayakawa, Imai, Isada, Iwamoto, Johnson, Kameyama, Kato, Kiyosawa, Kondo, Levasseur, Machida, Nagao, Nakagawa, Nakanishi, Nakatsuka, Narita, Noiri, Obata, Ogawa, Oguma, Ono, Sakuragi, Sasakawa, Sato, Shimamoto, Takata, Trick, Watanabe, Won amd Yoshie: Evidence for the grazing hypothesis: Grazing reduces phytoplankton responses of the HNLC ecosystem to iron enrichment in the western subarctic Pacific (SEEDS II). J. Oceanogr., vol 63, pp. 983-994, 2007. 5) Moore, Mills, Arrigo, Berman-Frank, Bopp, Boyd, Galbraith, Geider, Guieu, Jaccard, Jickells, La Roche, Lenton, Mahowald, Maranon, Marinov, Moore, Nakatsuka, Oschlies, Saito, Thingstad, Tsuda and Ulloa: Processes and patterns of oceanic nutrient limitation. Nature Geoscience, DOI: 10.1038/NGEO1765, 2013.

その他

PICES (北太平洋海洋科学機関)生物委員会議長(2010-)、日本海洋学会副会長(2011-2013)等。

将来計画

本研究室では、全球レベルで起こっている海洋生物群集とそれに起因する物質循環の変化を捉え海洋の持続的な利用に貢献することを考えています。

教員からのメッセージ

一緒に研究船に乗船し外洋へ乗り出し海洋の重要さと脆弱さをぜひ実感してください。

ホームページのURL

http://www.ecosystem.aori.u-tokyo.ac.jp/plankton/index.html