齋藤 晴彦
(さいとう はるひこ/准教授/基盤科学研究系)
先端エネルギー工学専攻/プラズマ理工学講座/プラズマ物理学の実験研究
略歴
2000年3月 京都大学理学部理学科(物理科学系)卒業
2005年3月 東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻博士課程修了,博士(科学)取得
2005年4月 理化学研究所山崎原子物理研究室 基礎科学特別研究員
2006年4月 東京大学大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 助手(2007年度より助教)
2013年7月 マックスプランク・プラズマ物理研究所(ドイツ) 研究員
2018年10月 東京大学大学院新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 准教授(現職)
教育活動
大学院:プラズマ基礎論、非線形科学
研究活動
プラズマ理工学の実験研究,特にダイポール磁場配位を用いた先進的な核融合や反物質トラップを目標とした研究を行っています.
1. RT-1における高温プラズマと非中性プラズマの研究
磁気圏型装置RT-1で生成される高温プラズマを実験的に研究しています.ダイポール磁場配位では,実験室環境で惑星磁気圏を模擬してプラズマ現象の研究が可能であり,また惑星磁気圏をヒントに高性能プラズマの閉じ込めを実現する事で,次世代の核融合炉の実現を目指す基礎研究を進めています(文献1).また,非中性プラズマ実験では,純電子プラズマの長時間(300秒以上)閉じ込めを実現しており,新しい荷電粒子トラップの可能性が示されています.こうしたプラズマの安定な構造は,乱流による強磁場領域への輸送を経て自己組織化される事が明らかになりました(文献2,3).
磁気圏型プラズマ装置RT-1と,純電子プラズマの安定化の観測例 [H. Saitoh et al., Phys. Plasmas 17, 112111 (2010)].
2. 電子陽電子プラズマ生成の基礎研究
マックスプランク・プラズマ物理研究所とミュンヘン工科大学,核融合科学研究所等と共同で,大強度陽電子ビームを用いた反物質プラズマの生成を目標とする研究を行っています.小型のダイポール磁場配位を生成して,電子と陽電子の同時閉じ込めを目指しています.陽電子ビームのダイポール磁場中への高効率入射,1秒程度の閉じ込め,回転電場による径方向圧縮を実現しました(文献4,5,6).
陽電子入射実験に使用した,永久磁石を用いたプロトタイプ装置[H. Saitoh et al., New J. Physics 17, 103038 (2015)].
文献
1) "High-beta plasma formation and observation of peaked density profile in RT-1", H. Saitoh, Z. Yoshida, J. Morikawa, Y. Yano, T. Mizushima, Y. Ogawa, M. Furukawa, Y. Kawai, K. Harima, Y. Kawazura, Y. Kaneko, K. Tadachi, S. Emoto, M. Kobayashi, T. Sugiura and G. Vogel, Nuclear Fusion 51, 063034 (2011).
2) "Magnetospheric vortex formation: Self-organized confinement of charged particles", Z. Yoshida, H. Saitoh, J. Morikawa, Y. Yano, S. Watanabe, and Y. Ogawa, Physical Review Letters 104, 235004 (2010).
3) "Confinement of pure electron plasmas in a toroidal magnetic-surface configuration" H. Saitoh, Z. Yoshida, C. Nakashima, H. Himura, J. Morikawa, and M. Fukao, Physical Review Letters 92, 255005 (2004).
4) "Efficient injection of an intense positron beam into a dipole magnetic field", H. Saitoh, J. Stanja, E. V. Stenson, U. Hergenhahn, H. Niemann, T. Sunn Pedersen, M. R. Stoneking, C. Piochacz, and C. Hugenschmidt, New Journal of Physics 17, 103038 (2015).
5) "Lossless Positron Injection into a Magnetic Dipole Trap", E.V. Stenson, S. Nissl, U. Hergenhahn, J. Horn-Stanja, M. Singer, H. Saitoh, T. Sunn Pedersen, J.R. Danielson, M.R. Stoneking, M. Dickmann, and C. Hugenschmidt, Physical Review Letters 121, 235005 (2018).
6) "Confinement of Positrons Exceeding 1 s in a Supported Magnetic Dipole Trap"
J. Horn-Stanja, S. Nissl, U. Hergenhahn, T. Sunn Pedersen, H. Saitoh, E.V. Stenson, M. Dickmann, C. Hugenschmidt, M. Singer, M.R. Stoneking, and J.R. Danielson, Physical Review Letters 121, 235003 (2018).
その他
日本物理学会,プラズマ核融合学会,日本陽電子科学会各会員.
将来計画
RT-1における実験を通して磁気圏型配位を活用したプラズマ現象の理解を深めると共に,コンパクトな磁気圏型実験配位を実現する直接冷却型の超伝導ダイポール磁場配位の開発を進め,反粒子等の捕獲に適した新しい荷電粒子トラップを実現する事を目指しています.
超伝導小型装置の概念図と,NIFSにおいて作成した高温超伝導コイル巻線.
教員からのメッセージ
様々な分野と関連して発展してきたプラズマ理工学には,核融合のような巨大科学から比較的小規模なプロジェクトまで多くの研究テーマがあります.最先端の研究課題に積極的に取り組む事を通して自分の得意分野や強みを見出して下さい.