教員紹介

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大崎 博之

(おおさき ひろゆき/教授/基盤科学研究系)

先端エネルギー工学専攻/システム電磁エネルギー講座/超電導応用工学・電磁エネルギー変換工学

略歴

1983年3月東京大学工学部電気工学科卒業
1988年3月東京大学大学院工学系研究科電気工学専門課程博士課程修了(工学博士)
1988年4月東京大学工学部電気工学科助手
1989年4月同講師
1991年8月~1993年3月ドイツ・アーヘン工科大学客員研究員
1993年4月東京大学工学部電気工学科助教授
1995年4月東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻助教授
1999年4月東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻助教授
2004年9月より現職

教育活動

大学院:電気力学応用工学,電磁環境工学,電気機器学特論第2
工学部電気工学科:超電導エネルギー工学

研究活動

電気エネルギーの効率的利用と先進的電磁界応用システムの実現を目指して,超電導体や高性能永久磁石などの先端材料を活用し,優れた特性を有する電気エネルギー機器およびシステムの研究を進めている。電磁気学,超電導工学,電気機器学などをベースに,実験と理論解析,数値シミュレーションを駆使して研究を進め,その対象は,電力分野から交通輸送,産業応用,医用分野などに広がっている。

1)超電導エネルギー工学 -超電導体の電磁現象と応用機器・システム-
液体窒素温度(77K)で超電導状態を示す酸化物系超電導体の電力・輸送・産業応用・医用分野での実用的応用を目指して,材料の電磁的特性,熱的特性などの基礎物理から応用システムまで含めて研究を進めている。特に,高温バルク超電導体(例えば5~10cm程度の大きさの超電導体の塊)(文献1)と超電導薄膜のエネルギー機器応用(文献2)に着目して,その電気磁気特性と電磁力特性,通電特性等を実験および数値計算等を通じて明らかにし,さらにそれを応用した機器の特性解析を行って,応用可能性を検討している。

超電導応用機器・システム
バルク超電導体の強力な磁束源としての応用可能性,電力システムにおける短絡事故時の大電流を抑制し,系統の信頼性向上やフレキシブルな運用への大きな寄与が期待される超電導限流器,SMESやフライホールなどによるエネルギー貯蔵システム,超電導モータや磁気浮上システム,さらには,磁気共鳴画像診断装置MRIの高分解能化・高速化,あるいは計測装置としての新しい応用法などについても研究している。

電磁力応用機器・システム
2)先進的電磁界応用機器・システム 電磁力応用機器及びシステムは,永久磁石や超電導体などの材料面での進歩による高性能化が進むとともに,鉛直方向輸送や2次元駆動など,応用分野の拡大がみられ,我々の研究室でも様々な形式のリニアモータやアクチュエータ,磁気浮上システムの解析や実験的検討を行っている。2次元,例えば平面上でのダイレクトドライブにより高精度位置決めを目指すサーフェスモータ,高性能冷凍機用圧縮機内アクチュエータ,磁気浮上鉄道の車両運動解析およびシステムの検討,各種機器内の渦電流や鉄損の解析などの研究を進めている。


文献

1) H. Ohsaki, T. Shimosaki and N. Nozawa: Pulse field magnetization of a ring-shaped bulk superconductor, Superconductor Science and Technology, Vol.15, No.5, pp.754-758 (2002).
2) Y. Ichiki and H. Ohsaki: Numerical analysis and design of fault current limiting elements using large-size YBCO thin films, Physica C: Superconductivity, Vol.463-465, pp.1168-1171 (Oct. 2007).
3) Y. Ueda and H. Ohsaki: Fundamental Characteristics of a Small Actuator with a Magnetically Levitated Mover, The Fourth Power Conversion Conference (PCC Nagoya 2007), IEEJ-IAS and IEEE-IAS, LS2-3-2 (April 4, 2007).

その他

電気学会,低温工学協会,日本AEM学会,プラズマ・核融合学会,IEEE会員。
日本学術会議電気工学研究連絡委員会委員(1994-2000)。IEC/TC77国内委員会委員長(2005-)。日本AEM学会理事(1999-)・編集委員長(2000-2005)・論文委員長(2005-)。電気学会産業応用部門研究経営担当役員(2005-2007)・リニアドライブ技術委員会委員長(2002-2005)。産業用リニアドライブ国際シンポジウム実行副委員長(1995,1998)・委員長(2001)・組織委員長(2005),等。

将来計画

エネルギー分野における革新技術の一つとして期待の高い超電導技術の実用化を目指して今後も研究をさらに進めていく予定である。高温超電導体中の電磁現象とそれを応用した機器,システムの特性との関係を明確にし,従来機器にはない,あるいは特性が大きく勝るような超電導機器の研究を進めたいと考えている。一方,モータや電磁アクチュエータによるダイレクトドライブは,駆動特性を含めた機器・システムの総合的な特性を向上し,かつ騒音・振動の低減にも大きく寄与する。電気機械分野の研究者の立場からダイレクトドライブの研究を進め,特にリニアモータや磁気浮上技術の発展を目指していきたいと考えている。

教員からのメッセージ

エネルギー,特に電気エネルギーを発生,輸送,利用する電気機器の性能・特性の向上に対する要求が高まる一方で,CO2排出量削減や電力品質向上に対する要求を始めとする環境問題はますます重要性は増してきている。このような課題,問題を解決する電力用,輸送用,産業用の各種電気機器の研究開発を進める上で,若い研究者,技術者の力が求められている。エネルギーや環境,社会・経済などに幅広い関心を持って,新しい材料や技術の導入と最適設計などに基づく電気機械の研究に取り組んで欲しい。何事にも積極的に取り組む学生であることを期待している。