吉田 貢士
(よしだ こうし/教授/環境学研究系)
国際協力学専攻/農業環境学/熱帯モンスーン地域における水資源管理と食料生産
略歴
2003-2005 農村工学研究所 CREST研究員
・・・メコン川の水利用と水管理など
2005-2008 東京大学大学院 農学生命科学研究科 生物・環境工学専攻 講師
・・・作物モデル、水田水温予測モデルの構築など
2009-2020 茨城大学 農学部 准教授
・・・水循環-作物生長モデル、窒素負荷量推定モデルの構築など
2020-現在 東京大学新領域創成科学研究科 国際協力学専攻 教授
・・・安定した食糧生産と水環境保全、農業セクターにおける生産と消費の最適化など
教育活動
これまでに以下の講義を担当: 測量学,測量実習,農地環境工学実験,応用解析,農業水利学,水理学演習,水理実験,地域環境工学概論,水文学,応用水理学,霞ケ浦環境科学概論(英語),環境保全型農業論(英語), Applied Hydrology(英語),Climate Change Mitigation and Adaptation(英語),Sustainable Water Management(英語),Agricultural Water Management(英語),Agro-Environmental Studies(英語)
研究活動
アジアモンスーン地域における渇水リスクハザードマップの作成を行っています。アジアモンスーン地域では、今後も人口の増加が見込まれ、その人口を支える安定した食料供給が必要となります。しかし、灌漑システムが導入された農地はわずかで、大部分は降雨依存の天水田であるため米生産は不安定となります。渇水リスクは水の需要・供給バランスによって変化するため、河川における供給可能量と灌漑に必要な需要量の時間的・空間的変動を同時に評価する必要があります。そこで、気象条件をインプットデータとして大流域の水資源量を推定する水循環モデルと作物の生長量および灌漑必要水量を計算する作物モデルを構築し、渇水の状況把握や、渇水対策を立てる上で有用な渇水リスクハザードマップの作成を行い、適応策を導入した場合のリスク軽減量を評価しています。 また、畑作物と異なり、湛水状態で栽培する水稲においては、人為的な水管理により水温をコントロールし、冷害や高温障害の影響を緩和させることが可能です。異常気象時に、農家は自衛的に水管理や栽培体系を変更しています が、早期植・深水灌漑・通水灌漑などによる水需要の時間的変動や短期的集中により、極端な場合では灌漑水の供給能力を超えてしまい、一時的な渇水状態に陥る地域が発生します。そこで、気象情報をインプットとして水田 の水温変化、稲の生長を予測するモデルを開発し、ため池の水温解析と連動して、いつ・どれくらいの灌漑を行うのが最も効果的かを導き、地域の水管理計画に役立てます。 圃場における炭素・窒素の循環プロセスは土壌水分条件や温度条件により規定されます。植生の光合成による炭素固定や窒素吸収を作物生長モデルにより、土壌水分や地温条件を水・熱移動モデルにより解析し、水管理に伴う水田での脱窒量、メタン発生量や畑地における栄養塩溶脱量に関する評価を行っています。
文献
最新のものは以下を参照ください。
https://researchmap.jp/read0143474
Climate change impact on soil salt accumulation in Khon Kaen, Northeast Thailand, Hydrological research letter,doi.org/10.3178/hrl.15.92 (2021).
Weather-induced economic damage to upland crops and the impact on farmer household income in Northeast Thailand, Paddy and Water Environment, 17(3), 341-349 (2019).
Quantitative Evaluation of Spatial Distribution of Nitrogen Loading in the Citarum River Basin, Indonesia, Journal of Agricultural Meteorology, 73, 31-44 (2017).
熱帯湿地における排水路水位の制御に伴うCO2放出量および火災リスクの低減効果,土木学会論文集B1(水工学),75(2),I_355-I_360 (2019).
東北タイにおける気候変動適応策としての天候インデックス保険の可能性,土木学会論文集G(環境),25,I_377-I_384 (2017).
教員からのメッセージ
進行中のプロジェクトの一員として、どのような専門性や切り口で貢献が可能かに挑戦して頂きます。研究テーマは自由です。
渡航費、宿泊費はプロジェクトから支給します。
各プロジェクトには、3~5つの機関が参加し、それぞれの専門分野も多岐にわたります。プロジェクト会議等に参加すれば、それら多くの教員や学生と触れ合う機会が得られます。 学部時代の専門性を活かした活動を希望する学生に対しても、新しい分野にチャレンジしたい学生に対しても、多様な観点からアドバイスすることができると思います。また、物事を多角的にみる力を身に着けて頂きたいと思います。