山室 真澄
(やまむろ ますみ/教授/環境学研究系)
自然環境学専攻/陸域環境学コース/自然環境構造学分野
略歴
1984年3月東京大学理学部地理学教室卒業
1991年3月東京大学理学系研究科地理学専門課程博士課程修了(理学博士)
1991年4月通商産業省工業技術院地質調査所
2001年4月産業技術総合研究所海洋資源環境研究部門主任研究員
2007年4月現職
教育活動
大学院:水環境論・環境計測論
研究活動
富栄養化した沿岸域では、懸濁物食性二枚貝と植物プランクトンとのbenthic-pelagic couplingが作動し、その二枚貝が漁獲対象種であれば効果的な水質浄化効果があることや(文献1)サンゴ礁海域では窒素固定が活発に行われており、窒素循環からみると有機物のシンクになっていること(文献2)、潜水性鴨類は冬季に二枚貝を捕食することで夏季の水質悪化を緩和している可能性(文献3)などを、世界で初めて明らかにした。また、従来、富栄養化により沈水植物が衰退したとされてきたが、日本では除草剤が沈水植物であるアマモを消滅させ、それがきっかけで富栄養化が生じた例があることを報告した(文献4)。
文献
1) Yamamuro M. and Kamiya H.(2014) Elemental (C, N, P) and isotopic (δ13C, δ15N) signature of primary producers and their contribution to the organic matter in coastal lagoon sediment. Landscape and Ecological Engineering, 10(1), 65-75
2) Abe R., Watanabe H., Yamamuro M., Iguchi T. and Tatarazako N.(2013) Establishment of a short-term, in vivo screening method for detecting chemicals with juvenile hormone activity using adult Daphnia magna. Journal of Applied Toxicology, DOI 10.1002/jat.2989
3) Nakamura A., Takanobu H., Tamura I., Yamamuro M., Iguchi T., Tatarazako N. (2013) Verification of responses of Japanese medaka (Oryzias latipes) to anti-androgens, vinclozolin and flutamide, in short-term assays. Journal of Applied Toxicology, 34 (5), 545-553, 10.1002/jat2934
4) Yamaki A., Yamamuro M. (2013) Floating-leaved and emergent vegetation as habitat for fishes in a eutrophic temperate lake without submerged vegetation, Limnology, 14 (3), 257-268, 10.1007/s10201-013-0403-2
5) Husana D. E., Yamamuro M. (2013) Groundwater quality in karst regions in the Philippines, Limnology, 14 (3), 293-299
6) Yamamuro, M. and Koike, I.(1993) Nitrogen metabolism of the filter-feeding bivalve Corbicula japonica and its significance in primary production at a brackish lake in Japan. Limnology and Oceanography, 38, 997-1007.
7) Yamamuro, M., Minagawa, M., and Kayanne, H. (1995) Carbon and nitrogen stable isotopes of primary producers in coral reef ecosystems. Limnology & Oceanography, 40, 617-621.
8) Yamamuro, M, Oka, N. and Hiratsuka, J. (1998) Predation by diving ducks on biofouling mussel Musculista senhousia in a eutrophic estuarine lagoon. Marine Ecology Progress Series, 174, 101-106.
9) Yamamuro, M., Hiratsuka, J., Ishitobi, Y., Hosokawa, S., Nakamura, Y. (2006) Ecosystem shift resulting from loss of eelgrass and other submerged aquatic vegetation in two estuarine lagoons, Lake Nakaumi and Lake Shinji, Japan. Journal of Oceanography, 62, 551-558.
その他
科学技術・学術審議会(海洋開発分科会)委員・日本陸水学会評議員・環境ホルモン学会評議員
将来計画
メタボリックシンドロームに関心が持たれるなど、人間の健康については予防医学が重視されつつあります。環境については、問題が起こってからの原因に関する指摘や、失われた環境の修復方法については多くの研究があります。しかし、問題が起こる前に起こりえる問題を指摘し、予防する方法に関する研究は、特に水環境については非常に少ないのが現状です。
問題が起こらないようにするのが目的ですから、その成果が社会には伝わりにくく、また国際誌などにも掲載されにくいでしょう。しかし環境を守る上で必要なのは、そんな研究だと思います。そのような研究を目指すだけでなく、社会から評価される仕組みづくりも考えたいと思います。
教員からのメッセージ
総合科学である自然地理学の考え方で、水環境問題に取り組んでいます。水に着目しているのは、それが陸上での人間の営みを反映して様々な問題が起きているからで、そこにはおよそ環境問題のすべてに近い部分が関係していると思います。ですので、これまで水環境を学んだことがない方でも、環境問題解決に意欲を持っているならWelcomeです。