辻井 直人
(つじい なおと/准教授/基盤科学研究系)
複雑理工学専攻/複雑実験系講座/プラズマ物理、核融合
略歴
2005年3月東京大学理学部物理学科卒業
2012年7月米国マサチューセッツ工科大学博士課程修了(理学博士)
2012年8月~2012年9月米国マサチューセッツ工科大学ポスドク研究員
2012年10月~2013年3月独マックス・プランク・プラズマ物理学研究所ポスドク研究員
2013年4月東京大学大学院新領域創成科学研究科助教
2018年4月東京大学大学院新領域創成科学研究科講師を経て2024年4月より現職
研究活動
核融合エネルギーはクリーンで安全なベースロード電源になりうるものとして研究されています。トカマク型核融合炉により正味の出力パワーを得られる見通しである一方、商業炉実現のためにはプラズマの閉じ込め性能の改善や定常運転の実現等解決すべき課題がいくつも残っています。本研究室では、プラズマ波動を用いて、これらの課題を解決することを目指した研究を行っています。核融合プラズマのシミュレーションにおいては、大きく異なる時間、空間スケールを同時に扱ったり、粒子の速度分布まで含めた位相空間で記述することが必要となるため、しばしば、スパコンでの計算が必要となります。高精度のシミュレーション結果を実験と付き合わせることで、プラズマの振る舞いを定量的に理解し、波動による効果的な核融合プラズマ生成・制御手法の設計につなげます。江尻教授と東大柏キャンパスのTST-2球状トカマクを用いて研究を行うとともに、共同研究として、世界最高性能のトカマクであるJT-60SA(QST)実験にも参加しています。
数値計算により求めたTST-2におけるプラズマ波動の電場分布。
文献
1) N. Tsujii, I. Yamada, et al.: “Kinetic analysis of the characteristics of electron cyclotron heating assisted ohmic start-up in the trapped particle configuration of a tokamak”, Plasma Fus. Res. 18, 1402051 (2023).
2) N. Tsujii, et al.: “Modification of the magneto-hydrodynamic equilibrium by the lower-hybrid wave driven fast electrons on the TST-2 spherical tokamak”, Nucl. Fusion 61, 16047 (2021).
3) N. Tsujii, et al.: “Numerical modeling of lower hybrid current drive in fully non-inductive plasma start-up experiments on TST-2”, Nucl. Fusion 57, 126032 (2017).
その他
日本物理学会、プラズマ核融合学会、米国物理学会各会員。
将来計画
本研究室では、柏キャンパスのTST-2球状トカマクを使って、核融合エネルギーの早期実現につながるようなトカマク運転手法や技術開発を自由な発想で進めていきたいと考えています。現在は、プラズマ波動を用いて、高性能なプラズマをより効率的に作る手法を確立することが目標です。
教員からのメッセージ
柏キャンパス周辺は緑も多く、落ち着いて研究できる環境が整っています。TST-2は核融合実験装置としては小型ですが、学生の自由な発想を形にするには最適な装置であるとともに、学生でも運転することができる数少ない本格的なトカマクです。ここで得た経験は、修了後、大型装置で核融合研究をしていくときに大いに役立ちますので、核融合エネルギーを実現して世界のエネルギー問題を解決したいという学生を歓迎します。