教員紹介

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吉澤 晋

(よしざわ すすむ/准教授/環境学研究系)

自然環境学専攻/海洋資源環境学分野/海洋微生物生態

略歴

2003年3月 京都工芸繊維大学繊維学部高分子学科卒業
2005年3月 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科高分子学専攻 修士課程修了
2009年3月 東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻 博士課程修了、博士(環境学)
2009年4月 東京大学海洋研究所微生物分野 特任研究員
2010年4月 東京大学大気海洋研究所生物遺伝子変動分野 特任研究員
(2013年~2014年 マサチューセッツ工科大学 特任研究員)
2014年10月 東京大学大気海洋研究所生物遺伝子変動分野 講師
2016年10月 東京大学大気海洋研究所生物遺伝子変動分野 准教授
2018年 4月 東京大学大学院新領域創成科学研究科 自然環境学専攻 准教授
2018年 4月 東京大学大気海洋研究所生物遺伝子変動分野 准教授(兼務)

教育活動

大学院:海洋自然環境論、水圏生態論、沿岸海洋学実習、自然環境学概論
学部:全学自由研究ゼミナール

研究活動

植物はなぜ緑色なのか?緑色の光をエネルギーとして使う生物はいるのか?川に住む魚は何色を見ているのか?海に住む魚はそれとは違う色を見ているのか?チョウチンアンコウのチョウチンは何色に光るのか?
色への興味を出発点にし、様々な生物と光の関係を遺伝子解析を通して明らかにしたいと思っています。






学術研究船を用いた海水サンプリング

微生物の新しい光エネルギー利用機構(2008~):
生物は何色の光を、どのように利用しているのか?
この問いには、クロロフィルを持つ生物が赤や青の光を利用し光合成を行っていると答えるのが一般的です。つまり、利用されない光である“緑色が溢れる世界”が豊かな自然像として認識されるでしょう。しかしながら、僅かな栄養を奪いあう自然界で緑色光をエネルギーとして利用する生物は本当にほとんど存在しないのでしょうか?答えはNOです。我々の馴染み深い陸上生態系とは異なる海洋生態系には微生物型ロドプシンを用いて緑色の光をエネルギーとして利用する微生物が膨大な数存在することが近年明らかになってきました。そんな微生物の新しい光エネルギー利用機構を解明する研究を行っています。

発光微生物(2002~):
 海洋には陸上に比べて多くの発光生物が生息しており、太陽光の届かない深海においても生物が放つ光に溢れる世界であることが知られています。一般的に、海に生息する生物が放つ光は人間の目には青緑色として認識される範疇に入り、それほどのバリエーションがあるとは考えられていません。しかしながら、光の色は海水中での光の到達距離に影響を与える因子であるため、多少の違いでも重要だと考えられます。 私の分野では、微生物の放つ“光の色”に注目し、微生物の発光酵素(ルシフェラーゼ)遺伝子配列やゲノムから、彼らの光利用生態や発光酵素の進化に関する研究を進めています。




発光細菌で書いた文字




チョウチンアンコウはエスカ(チョウチンの部分)に発光細菌を共生させることで光を放ちます



微生物の分類(2005~):
生物の40億年の歴史の大部分は微生物によって担われ、地球上の生物生息可能域の大部分は微生物のみによって占められています。それにもかかわらず微生物(原核生物)の現在の種数は、昆虫の約1/100のわずか1万種程度です。私の分野では、フィールドワークから新種微生物の発見、種名の提案といった一連の分類に関する研究もおこなっています。




豊島でのサンプリング

文献

1) Hao Zhang, Susumu Yoshizawa, Ying Sun, Yongjie Huang, Xiao Chu, Jose M. Gonzalez, Jarone Pinhassi, Haiwei Luo. Repeated Evolutionary Transitions of Flavobacteria from Marine to Non‐Marine Habitats. Environmental Microbiology, 21(2), 648-666. (2019).
2) Yu Nakajima, Takashi Tsukamoto, Yohei Kumagai, Yoshitoshi Ogura, Tetsuya Hayashi, Jaeho Song, Takashi Kikukawa, Makoto Demura, Kazuhiro Kogure, Yuki Sudo and Susumu Yoshizawa. Presence of a haloarchaeal halorhodopsin-like Cl- pump in marine bacteria. Microbes and Environments, 33, 89-97. (2018)
3) Yohei Kumagai, Susumu Yoshizawa, Yu Nakajima, Mai Watanabe, Tsukasa Fukunaga, Yoshitoshi Ogura, Tetsuya Hayashi, Kenshiro Oshima, Masahira Hattori, Masahiko Ikeuchi, Kazuhiro Kogure, Edward F. DeLong and Wataru Iwasaki. Solar-panel and parasol strategies shape the proteorhodopsin distribution pattern in marine Flavobacteriia. The ISME journal, 12, 1329-1343. (2018)
4) Daniel K. Olson, Susumu Yoshizawa, Dominique Boeuf, Wataru Iwasaki, Edward F. DeLong. Proteorhodopsin Variability and Distribution in the North Pacific Subtropical Gyre. The ISME journal, 12, 1047-1060. (2018)
5) Akiko Niho∇, Susumu Yoshizawa∇, Takashi Tsukamoto∇, Marie Kurihara, Shinya Tahara, Yu Nakajima, Misao Mizuno, Hikaru Kuramochi, Tahei Tahara, Yasuhisa Mizutani, and Yuki Sudo. Demonstration of a Light-Driven SO42- Transporter and Its Spectroscopic Characteristics. Journal of the American Chemical Society, 139 (12): 4376-4389. (2017)
6) Toshiaki Hosaka, Susumu Yoshizawa, Yu Nakajima, Noboru Ohsawa, Masakatsu Hato, Edward F. DeLong, Kazuhiro Kogure, Shigeyuki Yokoyama, Tomomi Kimura-Someya, Wataru Iwasaki and Mikako Shirouzu. Structural mechanism for light-driven transport by a new type of chloride ion pump, Nonlabens marinus rhodopsin-3. Journal of Biological Chemistry, 291(34), 17488-17495. (2016)
7) Yuki Sudo and Susumu Yoshizawa. Functional and Photochemical Characterization of a Light- Driven Proton Pump from the Gammaproteobacterium Pantoea vagans. Photochemistry and Photobiology, 92(3), 420-427. (2016)
8)Hideaki E. Kato, Keiichi Inoue, Rei Abe-Yoshizumi, Yoshitaka Kato, Hikaru Ono, Masae Konno, Shoko Hososhima, Toru Ishizuka, Mohammad Razuanul Hoque, Hirofumi Kunitomo, Jumpei Ito, Susumu Yoshizawa, Keitaro Yamashita, Mizuki Takemoto, Tomohiro Nishizawa, Reiya Taniguchi, Kazuhiro Kogure, Andres D. Maturana, Yuichi Iino, Hiromu Yawo, Ryuichiro Ishitani, Hideki Kandori and Osamu Nureki. Structural basis for Na+ transport mechanism by a light-driven Na+ pump. Nature, 521, 48-53. (2015)
9) Susumu Yoshizawa, Yohei Kumagai, Hana Kim, Yoshitoshi Ogura, Tetsuya Hayashi, Wataru Iwasaki, Edward F. DeLong and Kazuhiro Kogure. Functional characterization of flavobacteria rhodopsins reveals a unique class of light-driven chloride pump in bacteria. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 111(18), 6732-6737. (2014)
10) Keiichi Inoue, Hikaru Ono, Rei Abe-Yoshizumi, Susumu Yoshizawa, Hiroyasu Ito, Kazuhiro Kogure and Hideki Kandori. A light-driven sodium pump in marine bacteria. Nature Communications, 4, Article number: 1678. (2013)
11) Susumu Yoshizawa, Akira Kawanabe, Hiroyasu Ito, Hideki Kandori and Kazuhiro Kogure. Diversity and functional analysis of proteorhodopsin in marine Flavobacteria. Environmental Microbiology, 14, 1240-1248. (2012)
12) Susumu Yoshizawa, Minoru Wada, Kumiko Kita-Tsukamoto, Akira Yokota and Kazuhiro Kogure. Photobacterium aquimaris sp. nov., luminous marine bacteria isolated from seawater. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 59, 1438-1442. (2009)
13) Susumu Yoshizawa, Minoru Wada, Kumiko Kita-Tsukamoto, Eiko Ikemoto, Akira Yokota and Kazuhiro Kogure. Vibrio azureus sp. nov., a luminous marine bacterium isolated from seawater. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 59, 1645-1649. (2009)

その他

日本微生物生態学会、日本地球惑星科学連合、International Society for Microbial Ecology、Association for the Sciences of Limnology and Oceanography、American Society for Microbiology。

将来計画

陸上生態系ではいわゆる自然豊かな場所といえば、緑色の植物が生い茂る環境を想像する人がほとんどだと思います。これは植物が利用しにくい緑色の光が葉で反射して我々の目に届いているからです。つまり自然豊かな場所が緑色で象徴されるのは、緑色光エネルギーを吸収する生物がほとんど存在しないからに他なりません。しかしながら、過酷な生存競争が四六時中繰り広げられる生態系において、緑色光を使う生物がほとんどいないのはなぜなのでしょうか?陸上生態系に緑色光を利用する生物が”ほとんどいない理由”を、生物の光利用の進化史を紐解くことで解き明かしたいと考えています。

教員からのメッセージ

微生物生態の研究と聞くと、なんだか馴染みがなく、地球環境にあまり関係の無い分野だなと感じる人が多いかもしれません。しかしながら、近年の研究から“地球規模での物質循環”や“生態系を流れる太陽光エネルギーフロー”を駆動する生物の主役は微生物だということが徐々に分かってきました。それではなぜ、微生物生態という言葉がそれほど一般的ではないのか?それは他の生物に比べて分かっていないことが多すぎるからです。そんな未知がたくさん詰まった微生物生態を一緒に解き明かしましょう!

ホームページのURL

https://genedynamics.aori.u-tokyo.ac.jp/