教員紹介

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北川 貴士

(きたがわ たかし/教授/環境系)

自然環境学専攻/海洋生物圏環境学/高度回遊性魚類の行動生理生態学

略歴

1997年03月 京都大学農学部 水産学科 卒業
1999年03月 東京大学大学院 農学生命科学研究科 水圏生物科学専攻 修士課程 修了
2002年03月 東京大学大学院 農学生命科学研究科 水圏生物科学専攻 博士課程 修了( 博士〔農学〕)
2001年04月 日本学術振興会特別研究員(DC2)
2003年04月 日本学術振興会特別研究員(PD)
2005年11月 東京大学海洋研究所 海洋生物資源部門 助手
2006年03月 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 助手(海洋研究所 兼務助手)
2007年03月 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 助教(大気海洋研究所 兼務助教)
2012年12月 東京大学大気海洋研究所 国際沿岸海洋研究センター 准教授
2022年04月 東京大学大気海洋研究所 国際・地域連携研究センター 准教授
2023年04月 現職

教育活動

・大学院講義等
 新領域創成科学研究科:
 水圏生態論、海洋自然環境論、海洋問題演習Ⅳ、沿岸海洋学実習、海洋法・海洋政策インターンシップ実習

 農学生命科学研究科:海洋生物学

・学部講義:
 農学部:生物海洋学

・横断型教育プログラム
 海洋アライアンス:海洋学際教育プログラム

研究活動

高度回遊性魚類と呼ばれる魚種は、一つの排他的経済水域を越えて長距離を大回遊する。対象種の適正な国際資源管理、海洋の持続的利用のためには、その基礎として回遊・行動生態を詳細に把握することが重要である。マグロ族やサケ属を中心とした魚類の回遊・行動生態を、小型記録計、超音波発信機、数値シミュレーション、魚体内組織などを用いて調べ、行動の発現要因・適応進化過程の解明やそれに基づく将来分布の予測などを行っている。特に、個体の行動を環境(変化)に対する個体の内的(生理)状態を介した応答として捉え、技術開発を含む多様な手法を用いて研究を進めている。

文献

・Kitagawa T, Kimura S eds (2015) Biology and ecology of bluefin tuna. CRC Press, pp 433.

・北川貴士(2012)マグロはおもしろい 美味のひみつ,生き様のなぞ.講談社 pp272.

1) Kitagawa T, Abe TK, Kubo K, Fujioka K, Fukuda H, Tanaka Y (2022) Rapid endothermal development of juvenile Pacific bluefin tuna. Frontiers in Physiology 13. doi: 10.3389/fphys.2022.968468

2) Iino Y, Kitagawa T, Abe TK, Nagasaka T, Shimizu Y, Ota K, Kawashima T, Kawamura T (2022) Effect of food amount and temperature on growth rate and aerobic scope of juvenile chum salmon. Fisheries Science. doi: 10.1007/s12562-022-01599-w

3) Aoki Y, Jusup M, Nieblas AE, Bonhommeau S, Kiyofuji H, Kitagawa T (2020) Early-life ontogenetic developments drive tuna ecology and evolution. Journal of Marine Systems, 206: doi: 10.1016/j.jmarsys.2020.103307

4) Abe TK, Kitagawa T, Makiguchi Y, Sato K (2019) Chum salmon migrating upriver accommodate to environmental temperatures through metabolic compensation. Journal of Experimental Biology 223: doi:10.1242/jeb.186189

5) Kitagawa T, Ishimura T, Uozato R, Shirai K, Amano Y, Shinoda A, Otake T, Tsunogai U, Kimura S (2013) Validity of otolith δ18O of Pacific bluefin tuna (Thunnus orientalis) as an indicator of ambient water temperature. Marine Ecology Progress Series 481: 199–209. doi: 10.3354/meps10202

6) Kitagawa T, Kato Y, Miller MJ, Sasai Y, Sasaki H, Kimura S (2010) The restricted spawning area and season of Pacific bluefin tuna facilitate use of nursery areas: a modeling approach to larval and juvenile dispersal processes, Journal of Experimental Marine Biology and Ecology 393: 23–31.

7) Kitagawa T, Nakata H, Kimura S, Itoh T, Tsuji S, Nitta A (2000) Effect of ambient temperature on the vertical distribution and movement of Pacific bluefin tuna (Thunnus thynnus orientalis). Marine Ecology Progress Series 206: 251–260.

その他

・海と希望の学校 in 三陸(東大FSI事業):
 三陸各地の地域アイデンティティを再構築し、地域に希望を育む人材を育成する文理融合型の活動

・所属学会:
 日本水産学会,水産海洋学会(理事),日本魚類学会,生き物文化誌学会,バイオロギング研究会(幹事),サケ学研究会

将来計画

沿岸域は,陸域と河川・地下水の水系で繋がり,陸域から供給される栄養塩類により様々な生物を育み,豊かな生態系を形成している。近年、海洋を取り巻く状況が大きく変化しており,様々な生態系サービスを提供する沿岸域の保全は今後これまで以上に重要となっている。本研究室では、持続的海域利用という観点から,フィールドワークを中心に,沿岸を高度に回遊する高次魚類の,人間活動などによる環境変動に伴う応答機構,それに基づく将来分布予測に関する研究を推し進めていく。魚類の行動を環境に対する個体の内的(生理)状態を介した応答として捉え,開発を含む多様な手法を用いて研究を進め,国内外をリードしていきたい。社会連携を進めながら沿岸海洋環境・生物資源と人間社会とのあり方などを社会に発信し,海洋科学リテラシーの向上,地域アイデンティ再構築に伴う地域創生を視野に入れた新しい学問領域の途を開きたい。