米国、ワシントンに本部をおく世界銀行(国際復興開発銀行)は、開発途上国の経済発展を支援するために設置された国際機関である。現在の日本は米国に次ぐ第2位の出資国であるが、昭和20 年代から40 年代に掛けては最大の資金借り入れ国であり,40 近いプロジェクトの援助を受け,日本の戦後復興と経済成長の礎となった.
根釧パイロットファームは,世界銀行の支援を受けた,酪農を主体とする大規模農業開発プロジェクトである.日本では初めての機械開墾による農地開発は,北海道でそれに続く開墾計画で「パイロットファーム方式」が適用される契機となるなど,日本の農業に大きな進歩をもたらした.
しかし,パイロットファームの入植者は,導入したジャージ牛の伝染病感染,安定した経営には不十分な牧草地面積など,予期しない困難に直面し,離農を余儀なくされた入植者も少なくなかった.
根釧パイロットファームの経験は将来の日本農業を考えるだけでなく,現在,多くの開発途上国において農業開発を援助している日本にとって貴重な示唆を与えるものである.
本国際セミナーは,根釧パイロットファームの経験を被援助国であった日本の立場から振り返り、そこから得られた教訓を,根釧パイロットファーム関係者に呈示し,率直な意見を得ることにより,更に現実的かつ有用性が高い知見をとりまとめ,国際社会に向けて発信することを志向している.
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