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「新地町のエネルギーと交通」公開成果発表会を開催

投稿日:2023/02/07 更新日:2023/02/22
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新領域創成科学研究科「公・民・学共創による持続可能まちづくりを通じた復興知人材育成事業」は2023年2月2日(木)、新地町文化交流センター多目的ホールにおいて、「新地町のエネルギーと交通」をテーマとした大学院生による研究活動の公開成果発表会を開催しました。
研究科が協定を持つ福島県相馬郡新地町および新地町立尚英中学校のみなさんもオンライン等で参加し、研究成果の共有と活発な議論が行われました。

本事業の実施統括責任者・徳永朋祥教授の開会挨拶、今年度の活動動画の上映後、「環境システム学輪講」の成果発表が行われました。
「福島県新地町の風力発電ポテンシャルの現状評価」と題した発表では、新地町における風力発電の妥当性が紹介されました。新地町周辺は年間を通して風が弱く、小型の風車が適しています。仮に一住宅地域に一基、高さ8m、羽根の直径4m程度の小型風車を設置したとしてシミュレーションすると、新地町全体の年間消費電力の約10%に相当する140万kWhの発電量が見込めるとの結果が出ました。設置コストの他、夏から秋にかけての風力不足といった課題があり、太陽光発電で補う等の提案がなされました。
続いて「新地町の公共交通の課題分析」と題する発表では、新地町民の移動の需要に応えながら環境にやさしい街づくりを目指した研究が紹介されました。現在走行している「しんちゃんGO」は、朝晩は通勤通学、日中は通院に使われています。また、新地町では、登録車両数と人口がほぼ同じという現状があります。そこで公共交通にシフトし、さらにEV化してCO2排出量削減を目指します。しんちゃんGOの利用者が2倍になるとCO2を6%削減でき、また走行ルートの見直しで10%削減が可能との試算が紹介されました。課題は財源やドライバーの確保であり、交通需要の掘り起こしが重要であることが示されました。

共同研究をしている目白大学の活動報告の後、「環境システム学実地演習」の成果発表がありました。福島県ソーラーシェアリングと中国光伏農業発電との比較検討では、コストは中国のほうが15%くらい安いが、どちらも黒字化まで10年以上かかるといった試算が紹介されました。また、作物別の遮光率を考慮すると、新地町の耕地面積の1割に導入するだけで、新地町の電力需要をまかなえることが示されました。
最後に新地町役場企画振興課長による講評がありました。風車については、山側の場合は景観、海側では漁業への影響が懸念されますが、小型であれば実現可能性はあるかもしれないとのことでした。公共交通については、EVの導入を視野に入れつつ、採算性等を考慮して検討していきたいとのことです。
来場された新地町のみなさんと本研究科学生にとっても、有意義な成果発表会となりました。

大学院新領域創成科学研究科「公・民・学共創による持続可能まちづくりを通じた復興知人材育成事業」
HP:https://gsfs-shinchi.edu.k.u-tokyo.ac.jp/home-japanese

メディア掲載情報
日刊工業新聞(2023/2/9)

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