メダカ胚では、低温下で心拍開始期に生じる不整脈が心臓機能獲得を妨げる
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発生途中のメダカ胚は15℃以下の低温では正常に孵化できないことが実験的に知られていましたが、緯度が高く寒い地域に棲むメダカは、朝晩の水温が15℃を下回る春先に産卵を開始します。低温がメダカ胚の発生を妨げるという報告はありましたが、低温環境が器官形成期の胚に与える影響に注目した研究はこれまでありませんでした。
東京大学大学院新領域創成科学研究科の浅香智美研究員らは、国立遺伝学研究所の和田浩則研究員とともに、低温環境下で、胚全体の発生は正常に進行する一方、発生初期の胚において心臓の血液逆流が起こることを発見しました。心臓の血液逆流は、心臓が動き始める時期に生じる不整脈に原因があることも明らかになりました。また、柏キャンパスで維持されている野生メダカ系統の中に、低温耐性を示す系統があることを見つけました(図)。大館(秋田県)集団由来の系統では、すべての胚の心臓は15℃でも規則正しく拍動し、血流も正常であること、そしてこの性質はメンデル遺伝することが明らかとなりました。メダカ野生型系統間の多様性から、心臓の温度感受性の鍵となる遺伝子の存在が示されたことから、今後、低温環境に生物が適応する仕組みの一端が明らかになり、また胚時期の不整脈が心機能に与える機構が解明されることが期待されます。
この成果は、2月25日に英国の科学雑誌BMC Developmental Biologyに掲載されました。
Regular heartbeat rhythm at the heartbeat initiation stage is essential for normal cardiogenesis at low temperature
Tomomi Watanabe-Asaka, Yoshio Sekiya, Hironori Wada, Takako Yasuda, Ikuya Okubo, Shoji Oda and Hiroshi Mitani
BMC Developmental Biology 2014, 14:12
February 25, 2014 (Published online)