昆虫のホメオスタシスを担うホルモン(ITP: ion transport peptide)の受容体を発見
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節足動物でユニークなホルモンの1つであるITP(Ion-transport peptide)の受容体を、カイコを使って同定することに成功しました。ITPは多機能性で、生体内での真の機能が分からないとされているホルモンの1つです。このホルモンの生理活性としては、甲殻類では脱皮制御や糖新生に関わるとされている一方、昆虫では体内のイオンバランスのホメオスタシスに関わるとされています。今回の成果は、ITPの真の機能を探り昆虫におけるホメオスタシスの内分泌調節を理解するための重要な発見です。
東京大学大学院農学生命科学研究科(永井千晶(現国立循環器病センター)ら)、東京大学大学院新領域創成科学研究科(永田晋治准教授)の研究チームは、3種のGタンパク質共役型受容体(GPCR)をITP受容体として同定しました。このITP受容体は、セカンドメッセンジャーをcGMP(環状グアノシン一リン酸)とした珍しいタイプのGPCRでした。エビやカニなどの甲殻類の血糖値や脱皮変態は、このITPに類似した構造を持つペプチドホルモン(CHH:Crustacean hyperglycemic hormone)により制御されています。昆虫の体内のイオンホメオスタシスのみならず、エビやカニの成育制御などの研究にも貢献すると期待されます。この成果はJournal of Biological Chemistryに掲載されました。
発表論文
C. Nagai, H. A. Mabashi, H. Nagasawa and S. Nagata (2014)
Identification and characterization of receptors for ion transport peptide (ITP) and ITP-like (ITPL) in the silkworm Bombyx mori. J. Biol. Chem. 289: 32166-77.