STAIG:空間トランスクリプトーム解析の新展開 ―画像支援型グラフ対照学習を用いた先進手法の開発と特性解明―
- 研究成果
東京大学医科学研究所
東京大学大学院新領域創成科学研究科
概要
東京大学医科学研究所機能解析イン・シリコ分野の中井謙太教授による研究グループは、空間トランスクリプトーム解析において、遺伝子発現・空間座標・組織学的画像を統合活用できる新規深層学習モデル「STAIG」を開発し、サンプル間のバッチ効果を低減した高精度な空間ドメイン解析を可能にしました。
本研究では、ガウシアンフィルタやバンドパスフィルタでノイズを除去した病理組織学において最も標準的なHE(ヘマトキシリン・エオジン)染色画像から得た特徴を、自己教師あり学習モデル(BYOL)により埋め込みベクトルへ変換し、空間情報に基づくグラフ構造と組み合わせる技術を用いることで、グラフノード(スポット)間の近傍関係を保ったまま統合解析することに成功しました。先行研究と比較して座標整合を必要としない点に新規性があり、多種多様な組織サンプルに適用可能であるため、がん微小環境などの空間生物学研究のさらなる発展が期待されます。本研究成果は2025年1月26日、「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
STAIGフレームワークの概要
STAIGフレームワークは、空間トランスクリプトミクスデータを効果的に解析するための一連のプロセスを統合的に示しており、画像処理とグラフ対照学習を組み合わせることで高精度な空間ドメインの同定と統合を実現しています。
発表者・研究者等情報
東京大学
大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻
YANG Yitao(ヨウ ヤクトウ) 博士課程
CUI Yang(サイ ヨウ) 博士課程
ZENG Xin(ゼン シン) 博士課程(研究当時)
ZHANG Yubo(チョウ ウハ) 博士課程(研究当時)
医科学研究所 附属ヒトゲノム解析センター 機能解析イン・シリコ分野
中井 謙太 教授
兼:東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻
朴 聖俊 准教授
Martin de Jesus LOZA-LOPEZ 助教
論文情報
雑誌名:Nature Communications
題 名:STAIG: Spatial transcriptomics analysis via image-aided graph contrastive learning for domain exploration and alignment-free integration
著者名:Yitao Yang, Yang Cui, Xin Zeng, Yubo Zhang, Martin Loza, Sung-Joon Park & Kenta Nakai
DOI: 10.1038/s41467-025-56276-0
URL: https://www.nature.com/articles/s41467-025-56276-0
詳しくは、東京大学医科学研究所ウェブサイトをご覧ください。
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00321.html