機能性物質科学 木村剛教授研究室
Kimura Tsuyoshi
研究内容の紹介
本研究室では、従来のマルチフェロイック物質の範疇を超えた新しいタイプのマルチフェロイック結合の創成および新規マルチフェロイック物質開発を行い、複数の構造・電子秩序状態の結合に起因する普通でない電気・磁気特性の制御など新規物性・機能の発現をねらっています。 国内外の様々な測定および計算手法を持つ共同研究者と連携して、強磁性、強誘電性、強弾性といった固体における従来の秩序相の概念を超えた新しい秩序状態の創成、さらにそれらの複合物性の制御法の確立を目指しています。また,物質開発に関しては,遷移金属化合物を主とする従来のマルチフェロイック物質の枠にとどまらず、様々な物質系を対象とした革新的なマルチフェロイック物質をはじめとする新たな機能性物質への展開を図っています。
育成した希土類金属化合物の単結晶試料
開発した高圧下強誘電特性測定用セル。セル中の試料の配置図とその写真。
特殊なX線を使って明らかになったらせん状に配列した電気四極子を起源とする鏡像構造
木村教授からのメッセージ
ときには常識にとらわれずにモノゴトを見る。ほかの人が予想しない、自分でなければ考えないような着眼点で、トライアル・アンド・エラーを繰り返し、新しい発見をしましょう。
モノに電圧をかけることで、磁石でなかったモノが磁石になるような、「磁石の性質」と「電気を蓄える性質」が絡み合った現象の研究に取り組んでいます。このような複合現象は学部レベルの教科書には載っていないような稀な現象で、「マルチフェロイック物質」と呼ばれ、2001年当時、学界では複数の理論家によって、否定的な見解が議論されていました。 私自身は実験家ですので、21世紀になるまで見過ごされていたマルチフェロイック物質を、自ら創製することで打ち破ろうと考え、実際にこの分野に踏み込みました。新物理現象、新機能性物質の発見のためには、最初は偶然の産物(ときには運)が必要となることもあります。しかし、その芽を足掛かりに、どのような元素や構造を持つ化合物がふさわしいかを考え、実際に合成し、測定し、トライアル・アンド・エラーを繰り返すことで、高機能な性質を持つ材料の創製へ繋がると思っています。
ぜひいろいろなことを学び、挑戦して下さい。また、博士後期課程の大学院生に対して、在学中に数か月間、海外の大学や研究所に滞在し、共同研究を実施しています。私自身、海外での研究経験で、人脈が大きく世界に広がりました。そして、外から日本を見るという経験も自国をさらに深く知る機会になります。あなたも、物質系専攻でこれまでになかった物質を作り出す新たな挑戦に参加しませんか?
キーワード
マルチフェロイクス / 電気磁気効果 / フェロイックドメイン / フェロアキシャル秩序 / 電気磁気光学効果 / ドメイン / TbMnO_3 / 六方晶フェライト / ドメイン構造 / 電場誘起交換バイアス効果 / コニカルらせん磁性 / らせん磁性体 / 交換バイアス / コニカルらせん磁性体 / マルチフェロイック / 電気旋光効果 / 電気磁気(光学)効果 / データベーススクリーニング / 非相反光学応答 / 電気磁気(光学)効果 / フェロイック秩序物性 / 複合ドメイン制御 / マルチフェロイック物質 / フェロカイラル秩序 / 磁気四極子秩序 / 液晶 / 共鳴X線回折 / フェロカイラル / フェロアキシャル / 磁気四極子 / フェロイック秩序 / magnetic-field-controlled ferroelectic polarization / orthorhombic lattice distortion / spin-orbital-lattice interaction / ferroelectlicity / manganese oxides / incommensurate transition / commensurate / orbital ordering / 強磁性 / 強相関電子系 / BiMnO_3 / 磁場誘起誘電率変化 / 磁場誘起強誘電分極フロップ / 斜方晶ゆがみ / スピン-軌道-格子相互作用 / 強誘電性 / マンガン酸化物 / 非整合転移 / 整合 / 軌道秩序 / スピングラス / 電気時期効果 / 物性実験 / カイラリティ / 電気四極子 / トロイダルモーメント / 酸化物トランジスタ / 三角格子反強磁性体 / 磁気的フラストレーション / 四極子秩序 / 磁気誘電効果 / 希土類金属Mn酸化物 / 遷移金属酸化物 / 磁性 / 誘電体 / 強相関系
プロフィール
1991年 東京大学工学部合成化学科卒業
1993年 東京大学大学院工学系研究科超伝導工学専攻修士課程修了
1996年 東京大学大学院工学系研究科超伝導工学専攻修士課程修了
1996-2000年 アトムテクノロジー研究体(つくば)博士研究員
2000-2003年 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 講師
2003-2005年 米国ロスアラモス国立研究所 Limited term staff member
2005-2007年 ルーセントテクノロジ-ズ・ベル研究所(H18.12よりアルカテル-ルーセントに社名変更)Member of technical staff
2007年 大阪大学大学院基礎工学研究科物質創成専攻 教授
2017年 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻教授
三澤 龍介 さん
木村剛先生は、数々の素晴らしい実績を挙げていらっしゃる第一線の研究者であり、同時に非常に面倒見がよく学生一人一人の目線に立って丁寧に研究指導をしてくださる先生でもあります。
芝研究テーマや実験手法など、学生の意見を尊重して自由に研究を行わせてくれ、広い俯瞰的視野と高い専門性から実験結果をもとに研究を大きく前進させる議論をしてくれます。そして何より学生の成長を第一に考えてくれる尊敬できる先生です。
私たちは、一人一人が独立した研 究テーマを持ち、各々のペースでのびのびと研究を行っています。また自分の意見を自由に言える雰囲気があるので、分からないことを互いに質問し合い、切磋琢磨しながら研究に打ち込める環境が整っています。
私たちの研究は、20年、30年先にこれまでにない画期的なデバイス材料等となり得る可能性を秘めた研究であり、このような研究を自らの手で進められることに面白さと大きなやりがいを感じます。
APPLIED PHYSICS
誘電性と磁性の絡み合った現象の探究
113-8656
東京都文京区本郷7-3-1
東京大学 大学院工学系研究科工学部6号館
物理工学専攻
木村剛教授研究室
03-5841-6820
tkimura@edu.k.u-tokyo.ac.jp
物質系専攻の目標
物質系専攻の目標は、未開拓な自由度を操ることができる舞台=“新物質”を開拓すること、その舞台から生み出される未知の現象を探索して優れた機能を引き出すこと、 また、その機構を解明すること、そして、それらの現象・機能の応用分野を開拓することで人類社会の発展に貢献することにあります。
物質系専攻
〒277-8561
千葉県柏市柏の葉5-1-5
東京大学柏キャンパス
新領域創成科学研究科
Mail:ams-office(at)ams.k.u-tokyo.ac.jp
(at) を @ にしてください。