量子物性 中辻知教授研究室
Nakatsuji Satoru
研究内容の紹介
現在、磁性や超伝導、スピントロニクスといった分野が、トポロジーという概念によって再び整理・統合され、多くの新しい物理現象の発見に繋がっている。これらの物性物理の変革には、素粒子論、宇宙論、量子情報などで発展してきた概念が大きく関わっており、既存の分野の枠組みを超えた新しい視点での研究が重要になっている。私達の研究室では、そのような新しい概念を具現化する量子物質を自ら作り出し、世界最高精度の物性測定技術によってその背後にある物理法則の解明を目指して研究を行っている。それだけでなく、量子物質の驚くべき機能性をスピントロニクスやエネルギーハーベスティングに利用するための研究も行っており、産業界からも注目を集めている。
a. Mn3SnとPt、Cu、Wとの積層膜における、ホール電圧の書き込み電流Iwrite依存性。b. 多値記憶の実証実験。c. Mn3Sn でのスピン軌道トルク磁化反転。[Nature 580 , 608 (2020)]
Fe3X (X = Ga, Al) におけるa. 結晶構造。b. 異常ネルンスト効果の温度依存性。c.ノーダルウェブ構造。[Nature 581 , 53 (2020)]
研究室の扉 「トポロジーがつくる巨大な磁気熱電物質」 (東京大学理学系研究科・理学部)
中辻教授からのメッセージ
固体中の電子の造る宇宙は、その量子性ゆえに、神秘的で多様な姿を見せます。新しい現象の探索とその謎解きから、革新的な機能性材料につながる発見が生まれます。
金属、セラミック、プラスティック、ナイロンなど、私たちの身近にあふれているのが無機材料です。パソコンやスマートフォンといった電子技術を担うのも無機材料です。それらの持つ様々な機能を決めるのは固体中の電子の量子性です。この固体中の電子の造る宇宙の探査とその謎ときは、まだまだ始まったばかりです。磁性、半導体、超伝導などの物質の示す神秘的な振る舞いは、ごく一部のみが理解されているだけで、その広大で多様な世界は、そのほとんどがまだ未開拓です。 私たちの研究は、この固体の中の電子の振る舞いを理解し、新しい機能を発見することが目標です。そのためには、先進的な技術を駆使してさまざまな新しい材料を合成し、その性質を正確に評価すること。それが、我々の理解を超えた新しい電子機能の発見につながります。そして、その発見が基礎となり、新しい物理概念が切り拓かれます。さらに、それは世の中の革新的材料や技術へと応用されていくでしょう。固体の中の電子の振る舞いには、我々の理解していないさまざまな現象が潜んでおり、まだまだ、ノーベル賞につながるような大発見をする可能性を大きく秘めています。私こそはという方は、ぜひとも挑戦してほしいと思います。
キーワード
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プロフィール
1996年 京都大学工学部金属系学科卒業
2001年 京都大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了
2001年-2003年 日本学術振興会 米国国立強磁場研究所 海外特別研究員
2003年-2006年 京都大学大学院 理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻 講師
2006年-2015年 東京大学 物性研究所 准教授
2012年-2015年 大阪大学 極限量子科学研究センター 客員准教授
2012年-2015年 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 さきがけ研究員(併任)
2016年-2017年 Johns Hopkins University Visiting Associate Professor
2016年-2019年 東京大学 物性研究所 教授
2018年-現在 Johns Hopkins University 物理学・宇宙天文学専攻 Research Professor(併任)
2019年-現在 Canadian Institute for Advanced Research Fellow
2019年-現在 東京大学 大学院理学系研究科 物理学専攻 教授
2019年-現在 東京大学 物性研究所 特任教授
2020年-現在 トランススケール量子科学国際連携研究機構 機構長(併任)
肥後 友也 さん
中辻先生は、研究者として尊敬でき、指導教官として信頼できる方です。研究に行き詰り相談に伺う度に、多くの経験と知識を活かして、新たな知見とやる気のみなぎってくるアドバイスをして下さいます。
研究室には、留学生や元社会人・文系出身の人も在籍しており、多様性に富んでいます。様々な価値観の中で研究生活を送れるのも中辻研の魅力です。さらに、研究室には毎年多くの研究者が海外から来られ、大変国際的です。私達も海外に長期の実験に行ったり、国際会議で発表をしたりして、世界を舞台に研究をしていることを感じます。
私達の研究は、こうした環境で育まれています。そこには、新しい物理現象の発見により世の中の常識を変えることができる「無限の可能性」があると思います。
物質系専攻は自分自身が積極的にアクションを起こせば、幅広い知識を吸収できる非常に恵まれた環境だと思います。新しい研究室への進学は不安が多いでしょうが、得られるものはそれ以上に多いです。みなさん勇気と希望をもって、物質系専攻に進学してください。
SOLID STATE PHYSICS AND CHEMISTRY
新しい物性とその背後にある物理法則の解明を目指しています。
277-8561
千葉県柏市柏の葉5-1-5
東京大学大学院新領域創成科学研究科
物質系専攻
中辻知教授研究室
04-7136-3240
satoru@issp.u-tokyo.ac.jp
物質系専攻の目標
物質系専攻の目標は、未開拓な自由度を操ることができる舞台=“新物質”を開拓すること、その舞台から生み出される未知の現象を探索して優れた機能を引き出すこと、 また、その機構を解明すること、そして、それらの現象・機能の応用分野を開拓することで人類社会の発展に貢献することにあります。
物質系専攻
〒277-8561
千葉県柏市柏の葉5-1-5
東京大学柏キャンパス
新領域創成科学研究科
Mail:ams-office(at)ams.k.u-tokyo.ac.jp
(at) を @ にしてください。