新物質科学 岡本佳比古教授研究室
Okamoto Yoshihiko
研究内容の紹介
新物質の発見は、物質の性質を理解する学問:物性物理学の進化に大きく貢献する可能性をもちます。私たちの研究グループでは、新奇な量子現象や革新的な電子機能を示す結晶性固体の新物質の発見を目指します。遷移金属を含む無機化合物を中心に、あらゆる元素を含む物質を対象として、新規物質のアイデア、データベースを駆使して得られる情報、様々な合成手法を組み合わせた物質開拓により、この目標を達成します。
例えば、とても対称性が高いけれども複雑な結晶構造をもつ新物質を創ることで、変わった性質をもつ新超伝導体や、これまでにない電子スピンの配列をもつような磁性体を発見します。また、全く逆に、究極の低次元結晶といえるような物質に着目することで、高い効率で熱エネルギーと電気エネルギーを変換することができる材料や、外場により大きく体積が変化するような新材料の開発を目指します。
しかし、見出した物質が、このような注文通りの性質を示すことは多くありません。
むしろ、予想外の性質が現われることの方が多く、そのような想定外の性質に出会えることが、物質開拓研究の本当の面白さかもしれません。その際に、本当に面白く、また、人類の役に立ちうるような物質を見逃さないように、超伝導、磁性、エネルギー変換、電子自由度、体積機能、フラストレーション、トポロジー、スピン軌道結合といった様々なキーワードを見据えながら、際立った性質を示す新物質を探索します。
CsW2O6単結晶において、-58°C以下で現れた「ブリージング・ハイパーカゴメ」と呼ばれる新しい原子配列パターンとW3”分子”。
低温で高い熱・電気エネルギー変換性能を示す一次元ファンデルワールス結晶Ta4SiTe4。液体窒素温度で動作する局所冷却デバイスの実現に繋がると期待している。
CaAgPにおいて実現した、「ノーダルライン半金属」と呼ばれる珍しい電子構造。Pdを添加したCaAgP単結晶の電気抵抗は、磁場中で特異な振る舞いを示した。
岡本教授からのメッセージ
実は、物理は面白いけど苦手だった。「面白い!」という気持ちが、不可能を可能に変え、実用化に貢献する。
柏キャンパスは新領域創成科学研究科で学生時代を過ごした場所です。出身の倉敷市から東京大学を受験して、東京の大学に通うつもりで上京したら、突然柏に行くことになって驚きました。10年以上柏にいたので、今は慣れ親しんできた場所に帰ってきたという感じです。
子供の頃は理科が得意というより、外遊びやゲームが好きな普通の子供でした。ただ理科全般は好きで、特に化学が得意だったので、東京大学理科Ⅰ類へ進学。実は、物理は面白いけど苦手でしたね(笑)。そして、無機化学がやりたくて研究室を選びました。当時は大所帯の研究室に所属して、化学をベースにした研究をしながら物理もやれたので楽しかったですね。先生は自由に研究をやらせてくれて、いろいろな物質を合成して特性を測ったり、とにかく面白かったですね。 就職を考えた時に、学生がいる環境が好きだったので、大学で働きたいと思い今に至ります。学生を指導する立場になり、分かりやすく説明する方法とか、何が本当に面白い研究なのかの判断とか、諸先生から学べたことがたくさんあったと思い返しています。
今は安定思考で就職を決める学生が多くなりましたが、しっかり実験をして研究を極めていくことで開けていく道があります。一緒に面白い何かを見つけましょう。物質の世界は広大で多様であり、多面的です。どんなに高いところに上っても、一人で全容を見渡すことなんて到底無理で、そこが魅力でもあります。物質系専攻には、物理、化学、材料など、様々なバックグラウンドをもつ人が集っており、物質研究にとって最適といえる集合知があります。物質の研究をするなら、物質系専攻です。物質を好きな皆さんと、ともに研究できることを楽しみにしています。
キーワード
ディラック電子系 / 熱電変換 / 幾何学的フラストレーション / 超伝導 / ディラック電子 / 磁場誘起歪 / 熱電変換材料 / 5d電子系 / 5d遷移金属化合物 / 反強磁性体 / 新物質開拓 / フラストレーション / 銅鉱物 / カゴメ格子 / 体積機能 / クロム化合物 / 磁歪 / エネルギー変換 / 一次元電子系 / 熱電冷却 / 新材料開拓 / 低次元電子系 / トポロジカル半金属 / トポロジカル超伝導 / ノーダルリング半金属 / トポロジカル物性 / 相転移 / 空間反転対称性 / ラインノード / 逆ペロフスカイト / カルシウム化合物 / Ca化合物 / 固体冷凍材料 / 負熱膨張 / 固体冷凍 / パイロクロア格子 / 熱・エネルギー変換材料 / 熱・エネルギー変換 / パイロクロア / エネルギー変換材料 / パイロクロア構造 / スピン軌道相互作用 / Ir化合物 / 新物質 / 強相関電子系 / イリジウム化合物 / スピン軌道結合 / 新超伝導体 / 新物質探索 / 幾何学的フラストレート磁性体 / 量子スピン / スピン液体
プロフィール
2001年 東京大学工学部応用化学科 卒業
2006年 東京大学新領域創成科学研究科物質系専攻 博士後期課程修了
2006年 理化学研究所 基礎科学特別研究員
2006年 東京大学物性研究所 助手
2014年 名古屋大学大学院工学研究科 准教授
2014年-2018年 名古屋大学高等研究院 准教授(兼担)
2018年-2019年 京都大学化学研究所 客員准教授
2018年-2022年 東京工業大学科学技術創成研究院特任准教授
2022年 東京大学物性研究所 教授
SOLID STATE PHYSICS AND CHEMISTRY
「面白い!」という気持ちが、不可能を可能に変え、実用化に貢献する。
277-8561
千葉県柏市柏の葉5-1-5
東京大学大学院新領域創成科学研究科
物質系専攻
岡本佳比古教授研究室
04-7136-3250
yokamoto@issp.u-tokyo.ac.jp
物質系専攻の目標
物質系専攻の目標は、未開拓な自由度を操ることができる舞台=“新物質”を開拓すること、その舞台から生み出される未知の現象を探索して優れた機能を引き出すこと、 また、その機構を解明すること、そして、それらの現象・機能の応用分野を開拓することで人類社会の発展に貢献することにあります。
物質系専攻
〒277-8561
千葉県柏市柏の葉5-1-5
東京大学柏キャンパス
新領域創成科学研究科
Mail:ams-office(at)ams.k.u-tokyo.ac.jp
(at) を @ にしてください。