牧野 泰才
(まきの やすとし/准教授/基盤科学研究系)
複雑理工学専攻/生体複雑学分野講座/触覚インタフェース,情動,触覚情報処理
略歴
2002年3月 東京大学工学部計数工学科卒業
2004年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻 修士課程修了
2007年3月 同大学院同専攻 博士課程修了
2007年4月 学術振興会特別研究員として同専攻システム情報第3研究室に所属
2008年4月 特任研究員として同専攻システム情報第3研究室に所属
2009年4月 慶應義塾大学 環境共生・安全システムデザイン教育研究センター 特任助教
2012年4月 同センター 特任講師
2013年4月 慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科 特任講師
2013年10月 東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻 講師
2014年4月より現職
教育活動
大学院:行動システム特論(情報理工学系研究科システム情報学専攻)
工学部計数工学科:応用音響学
研究活動
触覚を介したインタフェースの研究:
手の甲をタッチバッドのようにして利用する研究(文献1)や,前腕のせん断変形を計測し,入力インターフェースとして利用する研究(文献2)など,ヒトの皮膚を入力に利用するインタフェースの研究.あるいは,スマートフォンの操作性を向上させるような研究などを行っている。
前腕の水平方向の変形を計測し入力インターフェースとして利用する
触覚と情動:
触覚は情動と強く結びついた感覚である.同じ皮膚の接触であっても,好意の有無によって得られる感覚が大きく異なる.このようなヒトが対象に抱く好意,愛着などを適切にシステムに組み込み,触ることの価値を向上させる研究を行っている.例えば(文献3)で提案したのは,保有しているぬいぐるみをロボット化して動かすことで,ぬいぐるみ型ロボットよりも豊かな体験を提供するという研究である.
ぬいぐるみをロボット化するデバイス:PINOKY
文献
1) Y. Makino, Y. Sugiura, M. Ogata, and M. Inami: “Tangential force sensing system on forearm,” In Proceedings of the 4th Augmented Human International Conference (AH '13).
2)牧野泰才,前野隆司:“手の甲の皮膚感覚を利用した情報入力インタフェース,” 日本ロボット学会誌,Vol.30 No.5,p.488-490, 2012.(解説記事)
3) Y. Sugiura, C. Lee, M. Ogata, A. Withana, Y. Makino, D. Sakamoto, M. Inami, and T. Igarashi, “PINOKY: a ring that animates your plush toys,” In Proceedings of the 2012 ACM annual conference on Human Factors in Computing Systems (CHI '12), pp. 725-734, 2012.
その他
計測自動制御学会,日本VR学会,情報処理学会,各会員
VR学会学会誌委員幹事(2012~)
JEITA 感性センシング応用ロードマップ技術分科会 幹事(2012~)
計測自動制御学会論文集委員会委員(2009~2010)
計測自動制御学会 システムインテグレーション部門 触覚部会 委員など.
将来計画
これまでの科学技術,特に私の関係する情報技術は,我々の社会をどんどん便利にしていきました.それにより我々の生活の質が向上した面も大いにあります.一方で,便利になるのと引き換えに,一日の運動量であったり,対面での人とのコミュニケーションであったりと,情報技術の拡大に伴い減少してしまっている事柄も増えています.できることは増えたはずなのに,幸せになった気がしないという近年の社会の風潮は,このようなところに問題があるのではないでしょうか.
触覚は,人の情動に訴えかけます.近年では,簡単な行動を変化させられることも分かってきました.この研究を進めていくことで,人の心と身体をある程度の範囲で制御できるのではないかと期待しています.この技術を,より良い日々の生活の生きがいのために,活用していければと考えています.
教員からのメッセージ
大学院にいる2年間(あるいは博士まで入れて5年間)は,充実して過ごすのも,無為に過ごすのも本人次第です.意味のある楽しい期間になるのが,学生のみなさんにとっても,指導する我々教員にとっても望ましいことです.それを実現できるような充実した環境を提供していければと思っています.