愛知 正温
(あいち まさあつ/講師/環境学研究系)
環境システム学専攻/エネルギー環境学分野
略歴
2005年3月東京大学工学部システム創成学科環境エネルギーシステムコース卒業
2010年3月東京大学大学院工学系研究科地球システム工学専攻博士課程修了(博士(工学))
2010年4月東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻特任研究員
2010年10月東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻特任研究員
2012年1月東京大学人工物工学研究センター特任助教
2014年6月より現職
教育活動
大学院新領域創成科学研究科:人工物工学特論
工学部システム創成学科:プログラミング基礎、動機付けプロジェクト
工学部共通科目:人工物工学
研究活動
地質材料の特性を活用して、できるだけ環境負荷が少なく持続可能なエネルギーシステムの構築に貢献するための研究を行っている。地熱や地中熱利用、二酸化炭素地中貯留などの人間活動と自然環境の相互作用のモデル化や、適切な監視・管理手法の確立を目指した研究をしている。具体的なテーマは以下のようである。
1) 広域地下水流動システム中における詳細モデリング技術
自然環境と人間活動の相互作用をモデル化するためには、広域的な環境スケールでの現象と、局所的な人工物の施工スケールで発生する現象の両方を扱う必要があることが多い。注目すべき物理プロセスや要求される解像度・精度などが大きく異なるモデルを適切に連結し、効率的にモデル化する手法の開発を行っている(文献1)。
2) 自然に近い条件における原位置地層物性の評価技術
地下を適切に活用するためには、まずその性質を定量的に評価することが必要である。大気圧変動や潮位変動など、自然に発生している信号を受動的に観測して解析することで、自然に近い状態における地下の物理的性質を推定する技術の研究を行っている(文献2)。
3) 多相の間隙流体を含む多孔質体の力学
地中の熱や間隙流体圧が変化すると、それに伴って地層も変形する。地熱発電における水-水蒸気系や、二酸化炭素地中貯留における水-二酸化炭素系など、多相の流体が存在する場合にも地層の変形が評価可能となるように、変形理論の構築を行っている(文献3)。
また、その理論に基づいた数値シミュレーションと地表面変動モニタリングを組み合わせ、地下の状態を地表の情報からも推定可能とし、より効果的な監視・管理手法の確立へとつなげるべく研究を行っている。
文献
1) Aichi M. Coupled Groundwater Flow/ Deformation Modelling for Predicting Land Subsidence. In Groundwater Management in Asian Cities: Technology and Policy for Sustainability, Takizawa S (eds.), Springer-Verlag: Tokyo, pp105-124 (Chap.5), 2008.
2) 愛知正温, 塩苅恵, 徳永朋祥, 2011, 地下水面の潮汐応答に関する解析解の導出と伊豆諸島新島における原位置水理特性評価, 地下水学会誌, 53(3), 249-265.
3) Aichi M, Tokunaga T, 2012, Material coefficients of multiphase thermoporoelasticity for anisotropic micro-heterogeneous porous media. Int. J. Solid. Struct., 49, 3388-3396.
その他
日本地下水学会、日本応用地質学会、地盤工学会、日本地理学会、AGU、EGU等学会会員。
将来計画
私たちの社会を持続させていくためには、低環境負荷で、枯渇性資源に依存しないエネルギー供給・消費のシステムを構築することが、必要不可欠である。
そのためには、少ないエネルギーで従来以上の価値・サービスを得るための省エネ技術、再生可能で環境負荷の少ないエネルギー資源への転換、エネルギー使用によって発生した物質を適切に処分し環境影響を抑制する技術、の三本柱が重要である。
特に地質材料の特性をうまく活用することで、それらの実現に貢献できるような技術開発を行っていきたい。
教員からのメッセージ
科学技術が発達して多くのことが分かっているようでも、実際には一寸先は闇で、世の中にはよく分かっていないことが沢山あります。分かっていない部分を明らかにしていく努力とともに、人知の限界を謙虚に認めた上で、いかに不確実な部分と折り合いを付けながら物事を実現していくか、想定外の事態に陥った場合にいかにリカバーするかということを考えていくことが、これからますます大切になってくると思います。このような視点を踏まえつつ、若い学生の方々とともに、これからの環境学を展開していけたらと思っています。