鈴木 匡
(すずき まさし/准教授/生命科学研究系)
先端生命科学専攻/資源生物創成学分野/植物ウイルスの病原性解析と植物ウイルスベクター
略歴
1987年3月東京大学農学部農業生物学科卒業
1989年3月東京大学大学院農学系研究科修士課程修了
1989年4月日本たばこ産業(株)生命科学研究所
1996年7月東京大学大学院農学生命科学研究科助手
1997年11月博士(農学)(東京大学)
2001年4月横浜国立大学大学院環境情報研究院助教授を経て2005年4月より現職
教育活動
大学院:微生物生命科学、科学技術倫理討論演習、基礎生化学・分子生物学
農学部応用生物学専修:専門実験
研究活動
キュウリモザイクウイルスの遺伝子の機能解析(1989~1996):
日本たばこ産業(株)生命科学研究所において、3分節の1本鎖RNAをゲノムにもつキュウリモザイクウイルスの防除に関する研究を行った.(1) ゲノムのin vitro再合成系の構築を行い、移行タンパク質、外被タンパク質の機能を証明した(文献1).(2) 植物ウイルスの複製酵素を導入したウイルス抵抗性植物を作出した(文献2).
植物ウイルスの複製機構の解明とウイルスの多様性の研究(1997~2004):
東京大学大学院農学生命科学研究科および横浜国立大学大学院環境情報研究院において、ラッカセイ矮化ウイルスの複製酵素の成分間の相互作用と複製能の解析、異種ウイルス間の組換え機構についての研究を行った(文献3).また、横浜国大21世紀COE「生物生態リスクマネジメント」プログラムに参加し、ウイルス遺伝子組換え植物の利点、欠点の整理、微生物への遺伝子水平伝播のリスクに関する情報収集・解析を行った(文献4).
現在:植物ウイルスと植物との分子相互作用解析
植物は自然界において、ウイルス、細菌、糸状菌、線虫など多くの微生物による病害にさらされ、また昆虫による食害を受けている.さらに、微生物には昆虫により植物から植物へと媒介されるものも少なくない.このように、植物、微生物、昆虫の三者は、密接に関連しつつ複雑な相互作用を進化させてきた.現在は、これらのうち植物ウイルス、特に多犯性のキュウリモザイクウイルスとその近縁ウイルス(ラッカセイ矮化ウイルス、トマトアスパーミィウイルス)を主な材料として、ウイルスと宿主植物細胞との相互作用およびウイルスが病気をおこす機構を遺伝子、分子レベルで研究を行い、「ウイルスに感染するが病気を発症しない」という強い植物の開発の基礎となる研究を行なっている。
また、ウイルスの高度利用を目的に、ウイルスをベクターとして活用し、簡便な植物の遺伝子発現制御系の開発を行っている.
文献
1) M. Suzuki, S. Kuwata, J. Kataoka, C. Masuta, N. Nitta and Y. Takanami: Functional analysis of deletion mutants of cucumber mosaic virus RNA 3 using an in vitro transcription system, Virology, 183, pp.106-113. (1991).
2) M. Suzuki, C. Masuta, Y. Takanami and S. Kuwata: Resistance against cucumber mosaic virus in plants expressing the viral replicon, FEBS Letters, 379, pp.26-30. (1996).
3) M. Suzuki, T. Hibi and C. Masuta: RNA recombination between cucumoviruses: possible role of predicted stem-loop structures and an internal subgenomic promoter-like motif, Virology, 306, pp.77-86. (2003).
4)鈴木 匡: 遺伝子拡散-微生物への水平伝播-, 佐野浩監修 「遺伝子組換え植物の光と影II」 pp.47-68 (2003年) 横浜国立大学環境遺伝子工学セミナー編 (学会出版センター)
その他
日本植物病理学会会員.
日本植物病理学会庶務幹事(1996~1998)、日本植物病理学会関東部会幹事(1998~2000、2018~2019).
東京大学運動会硬式野球部部長(2017~)
一般財団法人東京六大学野球連盟理事(2017~)
将来計画
主なテーマは植物とウイルスとの相互作用、特にウイルスの複製、移行、病原性に関わるウイルス因子と宿主因子の相互作用を分子レベルで解明し、ウイルス病発生機構やウイルス複製機構を明らかにすることです.それらを通じて、植物やウイルスの機能を利用した生物資源の創成を目指しています.
教員からのメッセージ
実験生物系の大学院は、計画の立案・実行、温故知新、失敗の原因究明、結果の整理・図示・発表等プレゼンテーション能力、研究者のみならず一般的に社会人になってからも通用する能力を伸ばす場であると思います.どんどんチャレンジし、失敗して困難を克服して、新知見を得る喜びを味わいましょう.