教員紹介

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松本 直樹

(まつもと なおき/准教授/生命科学研究系)

先端生命科学専攻/構造生命科学講座/医薬デザイン工学分野

略歴

1991年3月東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了(薬学博士)、1991年4月~1999年3月 東京大学医科学研究所助手(寄生虫研究部)、この間1995年10月~1998年3月上記を休職。米国ワシントン大学(セントルイス)医学部博士研究員。1999年4月より現職。

教育活動

大学院:機能分子設計学、生物製剤・医薬創製学、生命科学英語特論、生命科学英語演習

研究活動

ナチュラルキラー(NK)細胞はある種のがん細胞を傷害する能力を持つリンパ球として発見され、ウイルスや細菌への感染への初期防御ならびにがん細胞出現の監視の役割を持つ。NK細胞が自己、非自己の認識を行うメカニズムについては長い間不明であったが、活性化ならびに抑制性の2種類のレセプターからのシグナルのバランスによって支配されていることが次第に明らかになってきた。このうち抑制性レセプターには、体を構成するほぼ全ての細胞が自己の目印として発現するMHCクラスIを認識するものがある。つまり、NK細胞は自己の目印であるMHCクラスIを標的の細胞上に見つけるとその細胞を攻撃しないという方法で自己・非自己の認識を行っている。私たちは、特にレクチン様構造を持つレセプター群について研究を進めてきた(文献1)。その結果、マウスLy49Aが認識するMHCクラスI上の部位を特定することに成功し(文献2-4)、さらにヒトCD94/NKG2が認識するMHCクラスI上の領域を明らかにすることにも成功した(投稿中)。また、これらの抑制レセプターに関する研究成果をがん治療に応用しようとする基礎研究を行っている。



Figure: マウスLy49A(リボンモデル)が結合する MHCクラスI(表面モデル)上の領域 (文献3)

文献

1) 松本直樹 炎症と免疫 9, 513-523 (2001)
2) N. Matsumoto et al. Immunity 8, 245-254 (1998)
3) N. Matsumoto et al. J. Exp. Med. 193, 147-157 (2001)
4) N. Matsumoto et al. J. Immunol. 166, 4422-4428 (2001)

その他

日本免疫学会、日本生化学会、日本寄生虫学会に所属。

将来計画

 NK細胞のMHCクラスIを認識する抑制レセプターについては最近の研究で多くの知識が集積された。しかし、NK細胞は、認識するリガンドが明らかでないオーファンレセプターを数多く発現しており、NK細胞による標的認識の全貌を明らかにするためには、これらレセプターのリガンドを明らかにし、その機能を解明することが必要である。我々は、現在精力的にこれらオーファンレセプターのリガンドの探索を進めている。また、興味深いことに、遺伝的に全く同じNKレセプターのセットを持っていても、個体が発現するMHCクラスIの種類が異なると、NK細胞はその個体のMHCクラスI環境に適応して自己を定義する。このNK細胞の自己適応ともいうべき機構は明らかにされていないが、その本質は自己寛容であると私は考え、この機構の解明という挑戦的な課題に取り組んでいる。また、これらの研究で得られた成果をNK細胞が生体防御を担う、がんや感染症に対する治療法の開発にも結びつけていきたい。
 外国で研究する機会を得て感じたのは、私自身も含めて日本人のプレゼンテーション下手である(もちろん中には上手な人はいるが)。いくらすばらしい結果、アイディアを持っていても、それを表現出来なければ、持っていないのと同じことである。しかしながら、うまく表現出来ればいいというだけでは困る。表現すべき中身が大事である。特に最近キットを使うことが多くなった生命科学の研究においてどのくらいの学生がその原理を理解して使っているのであろうか。基本的な理解がなければ、新たな手法による新たな発見は望めないし、満足なDiscussionも望めない。このようなことを念頭に置き、将来研究者として独り立ち出来るようなバランスのとれた人材を育成していきたい。

教員からのメッセージ

私たちの分野は、新領域創成科学研究科の誕生とともに出来た非常に若いラボです。多様なバックグラウンドを持った人間が集まり、わいわいとやっております。熱意にあふれる人材を募集します。興味をもたれた方は気軽にご連絡ください。