2011年度第2回学融合セミナー
- 講義:
- 2011年5月25日 16:30~18:00
- 場所:
- 新領域基盤棟大講義室(2C0)
タンパク質合成のお話:生命の成り立ちと疾病の理解を目指して
富田 野乃 准教授
生命の基本要素であるタンパク質は、DNAが持つ遺伝情報のコピーである mRNAを設計図としてリボソーム上で合成される。タンパク質合成(翻訳) の制御は、細胞や個体の発生・分化・疾患などにおいて重要な役割をはたす ことが明らかになっている。2009年のノーベル化学賞は『リボソームの構造 と機能の研究』に授与された。講義では、ヒト疾患との関連が高いミトコン ドリア翻訳系の研究の現状を中心に、翻訳研究の最新の知見や翻訳制御を 標的とした低分子化合物開発の現状などを紹介する。
魚は何故『魚の形』をしているのだろうか
影本 浩 教授
魚は驚くほど効率のよい泳ぎ手であることが知られており、その泳ぎは 古くから著名な応用数学者の興味の対象となってきた。魚には多種多様な種が 存在するが、一方でほとんどの魚に共通の特徴が見られる。即ち、魚は流線型 の胴体部と、厚さが薄く最後端の深さの高い尾びれとから成り、それらがヒン ジ様のくびれで結合された「魚の形」をしているといった事実である。また、 魚は自らの体を横方向にくねらせながら泳ぐことも特徴的である。本講演では、 魚は何故「魚の形」をしているのだろうかという講演者自身の疑問に対して、 魚は何百万年といった進化の過程の結果、泳ぎに最適な形として現在の「魚の 形」を得るに至ったとの仮定のもとに、数学的な最適化手法を用いて、「泳ぎ に最適な形」を特定し、それが「魚の形」となるかについて検討を行った結果 について述べる。
小さなプラズマが切り開く、材料科学の大きなフロンテイア
寺嶋 和夫 教授
固体,液体,気体に続く第4の物質の状態である“プラズマ”。界面化学の祖で あるラングミュアによって命名された“プラズマ”は、いまや先端科学技術の 多くの分野―半導体デバイス作製などの材料デバイスプロセス応用、廃棄物・ 有害物質処理などの環境応用、宇宙ロケットエンジンなどの機械工学応用、診断 や手術などの医療応用、などなど、実に幅広い科学分野の基盤科学技術として 展開し、その重要性は益々増している。本セミナーでは、本分野における新領域 である“小さなプラズマ(マイクロプラズマ)”が切り拓く、新たな科学と技術 の大きな可能性についてお話しさせていただく。