2011年度第3回学融合セミナー
- 講義:
- 2011年6月22日 16:30~18:00
- 場所:
- 新領域基盤棟大講義室(2C0)
森を支える木とキノコの共生
奈良 一秀 准教授
樹木の根には「菌根菌」という菌類が共生し、樹木の光合成産物を利用して土壌中に無数の菌糸を張り巡らせている。マツタケやトリュフもそうした菌根菌の一種である。一方、樹木は菌根菌の菌糸を根に代わる養分吸収器官として利用することで、土壌養分を効率的に吸収している。事実、多くの樹木は必要とする窒素やリンの大半を菌根菌に依存しているため、菌根菌なしでは正常に成長できない。このように、見えないところで森林を支えている木とキノコの共生について、その機能、生態、進化などを中心に紹介する。
脳という機械
深井朋樹 教授
アナログとデジタルが入り組んだ(ように見える)脳の回路が、情報を表現したり処理したりする仕組みは未だによく理解されていない。しかし近年、神経回路の構造やダイナミクスの研究が著しい発展を遂げつつある。本セミナーでは、神経回路の機能やそこで交わされている“暗号”を読み解くための、物理学や数学からのアプローチを紹介する。
ヒトの色覚多様性に進化学的意味を探る
河村正二 教授
ヒトは類人猿や旧世界ザルとともに狭鼻猿という分類の霊長類に入る。狭鼻猿類の特徴の一つは3色型といわれる色覚をもつことである。ところが狭鼻猿類の中 で ヒトにだけ2色型(赤緑色盲)や異常3色型(色弱)などの色覚異常と呼ばれる多様性が顕著である。なぜだろう?高度な文明により色覚異常が生存に不利とならなくなったためだろうか?近年、新世界ザルと呼ばれる狭鼻猿と異なるグループの霊長類の研究から、カモフラージュされた昆虫の採食など2色型の方が3色型より有利な面があることがわかってきた。これらの研究を紹介するとともにヒトの進化史から色覚多様性の意味を考えてみる。