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2016年度第5回学融合セミナー

講義:
2016年10月26日 16:50~18:35
場所:
新領域基盤棟大講義室(2C0)
齊藤 宏明 教授

黒潮の恵み:生物生産メカニズムとそのより良い利用に向けて

齊藤 宏明 教授

 日本の気候や環境、そして生物生産特性を考える場合、日本列島の位置と成り立ちを理解することが一つの出発点となる。日本列島はプレート沈み込み帯に接し、太平洋の西端中緯度(北緯24-46度)に位置するため、太平洋の西岸境界流である黒潮と親潮が、狭い大陸棚に接するように流れている。 黒潮が日本のすぐ沖合を流れることは、深層から表層へ栄養塩を供給する様々な物理機構が存在することを示唆している。また、生物が低緯度域および高緯度域から輸送されるため、黒潮域は世界的に見ても生物多様性の高い海域となっている。日本の豊かで多様な海の幸は、“黒潮が洗う日本列島”という地理的特性による部分が多い。しかし、黒潮は貧栄養の亜熱帯水を輸送している。 そもそも、黒潮の名の由来は、植物プランクトンが少なく透明度の高い青黒い水色である。黒潮域は、なぜ貧栄養海域であるにもかかわらず漁業生産が高いのか? 私はこれを“黒潮パラドックス”と名付けた。 黒潮パラドックの解明のためには、海洋物理過程による栄養塩供給機構の解明に加え、黒潮生態系の構成種とその被食―捕食関係といった食物網構造、生態系構成種の水温や餌濃度に対する生理・生態学的特性の解明が必須である。 また、環境変動に対する個々の生態系構成種の応答に加え、システムとしての黒潮生態系の応答を把握する必要がある。そのためには、海洋物理、生物地球化学、プランクトン生態、魚類生産、数値モデルなど様々な学術分野の研究者による、学術分野横断的な研究体制が必要不可欠である。発表では、黒潮域において高い生物生産が達成されるメカニズムに関する最新の知見を紹介すると 共に、科学的知見に基づく海洋生態系サービスのより良い利用に向けて、今後何を行っていく必要があるのかについて紹介する。

中山 幹康 教授

ダム建設に伴う移転への補償と生活再建

中山 幹康 教授

 過去に日本および海外で建設されたダムを事例として、ダム建設に伴う移転への補償と生活再建の実態を踏まえ、如何なる補償が提供され生活再建策が提示されるべきかを提言する。

吉田 憲司 客員教授

超音速旅客機の実現に向けた課題

吉田 憲司 客員教授

 航空機の高速化はその発達の歴史と言っても過言ではありません。しかし現在の旅客機は運航効率の観点で音速以下の飛行に留まっています。将来の航空輸送の可能性を広げるためには、音速以上の旅客機の登場が待たれていますが、 その経済性及び環境適合性にはまだまだ課題が存在します。しかし、それらへの技術的挑戦は米日で続けられています。その取り組みの一端をご紹介し、超音速旅客機の実現可能性についてお話しさせて頂きたいと思います。