元複雑理工学専攻・西田友是名誉教授が紫綬褒章を受章
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このたび、東京大学名誉教授の西田友是先生(元大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻教授)が「コンピュータグラフィクス研究の功績」で2017年秋の紫綬褒章を受章されました。
西田先生は、液晶ディスプレイはおろか、ラスタスキャン型のカラーディスプレイすら存在していなかった1970年代から、長年にわたって情報科学の教育と研究に努め、コンピュータグラフィクス(CG)分野のパイオニアとして、基礎をなす手法を多数打ち立てました。今日のCG映像産業の基礎技術である光の相互反射を含む光学シミュレーション手法??ラジオシティ法??を世界で初めて開発し、写実的な映像生成基盤を確立しました。また、実物に即した様々な光源モデルによって照明された物体の陰影計算方法(シェーディングモデル)を確立し、大気や霧、雲、煙などの光を散乱する媒質によるボリュメトリックな照明効果を世界で初めて開発しました。さらには、世界で初めて宇宙空間から眺めた地球などの惑星の照明計算手法を開発しました。また、工業製品の設計等での応用を目的として、曲面と光線との効率的で頑健な交点計算法を開発し、高精度な形状表現と写実性の両立を世界で初めて実現しました。そして、仮想世界を構築するためのもう一つの重要要素である音の生成に関しても先駆的な業績を残されています。
こうした手法は、映像制作や工業製品設計などの商用ソフトウェアの基盤技術として様々な場面で世界的に活用されており、映像産業や科学的可視化、ものづくりへの応用にも展開され、情報科学の広範な分野に多大な貢献を果たしました。CG技術により、現実世界を模擬した仮想世界をコンピュータ上に再構成できることから、その技術はバーチャルリアリティやAI社会での視覚情報基盤ともなりつつあります。
CG分野に対するこうした生涯に渡る貢献により、世界的に権威ある国際会議ACM SIGGRAPHおける最も名誉ある賞 Steven A. Coons 賞を2005年に受賞しました。この賞はCG界のノーベル賞とも呼ばれているもので、アジアからの研究者(および研究組織)としては初の受賞という快挙でした。また、画像電子学会フェロー、情報処理学会フェローに選ばれており、Asia Graphics Life-Time Achievement Award を2017年に受賞しました。さらに、情報処理学会グラフィクスとCAD研究会(現コンピュータグラフィックスとビジュアル情報学研究会)主査、画像電子学会ビジュアルコンピューティング委員会(VC委員会)委員長、CG-ARTS協会理事、画像電子学会副会長・会長などの要職を歴任し、学会の発展に多大の貢献をなしました。
このように、西田先生はパイオニアとしてコンピュータグラフィクスという分野を築き、数多くの著名な業績と国際的な交流を通じて当該分野の世界的な発展に寄与してきました。現在は広島修道大学にて教授を務めるとともに、株式会社ドワンゴにてUEIリサーチというCG研究所の所長に就任して、レンズ形状の設計法などのものづくりに利用できるCG技術を開発するなど、まだ現役の研究者として精力的に研究活動を継続しています。
この度のご受章を心よりお慶び申し上げますとともに、先生のご健勝とますますのご活躍を祈念しております。